医学的見地から肩や肘の障害を予防 TJ手術の権威が監修したアプリに込めた思い
日々の練習記録を入力→コンディションや故障リスクを明示する
故障で野球を諦める子どもを見たくない。肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威で、慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師が肩や肘の故障リスクを抑えるアプリ「スポメド」を監修した。医学的見地からデータを算出し、障害を予防するだけでなく子どもたちの技術的な成長を野球テストという形式で点数化し、ステータスで示す機能もついている。
子どもからプロ野球選手まで、トミー・ジョン手術を700件以上担当してきた古島医師は、故障で野球を諦めかけた多くの選手を救ってきた。だが、もどかしさも同時に感じていた。
「野球選手に多い、肩や肘の故障のほとんどは外傷などの怪我とは違います。練習のし過ぎによる“障害”で、将来を絶たれてしまう若者を多く見てきました。そうした故障で野球をやめる選手を減らしたいと思っています」
古島医師は肩や肘の障害は予防できると話す。そのためには、肩や肘が消耗品という考え方を今以上に広め、子どもたちや指導者が体の状態を正しく把握することが必要になるが、痛みや違和感は共有できない。
開発したアプリ「スポメド」では最新の医学的見地に基づいて、障害のリスクを示すことにこだわった。古島医師は「選手が無理をしない、指導者が選手に無理をさせないという環境を作り、選手が指導者に痛みや違和感を訴えづらいという現状も変えられればいいと考えています」と語った。
アプリには、まず身長や体重、年齢やポジションなどの情報を入れる。そして「80%以上の力で投げた球数」「疲労度」「違和感や痛みのある体の部分」など日々の練習の記録を入力すると、選手のコンディションや障害のリスクが一目で分かるようになっている。もちろん、ボールを投げて肩や肘に負担をかける以上、障害を100%なくすことはできない。しかし、古島医師は「回避することはできる」と強調する。