新庄氏は「気ばっかり遣っていた」 ド派手パフォを後押しした“戦友”が語る素顔

JDリーグのチェアマンに就任した島田利正氏【写真:宮脇広久】
JDリーグのチェアマンに就任した島田利正氏【写真:宮脇広久】

新庄監督から「恩返しでソフトボールのために何かしたい」との申し出も…

 一連の前代未聞のパフォーマンスで、当時の新庄氏には独断専行のイメージが付いて回ったが、素顔は違う。島田氏は「全て事前に、僕に言いに来てくれていました。わがままということは全くない。逆に彼は気ばかり遣っていましたよ」と証言する。「屋根から降りる時には、僕は『リハーサルをしなくて大丈夫か?』と聞いたのですが、『リハーサルをしたら、怖くなって本番ができなくなっちゃいますよ』と言っていました」と笑う。北海道移転直後の滑り出しで、ファンの興味を引こうと必死だったのだ。

 そんな新庄氏の指揮官就任は球界関係者、ファンの多くを仰天させたが、島田チェアマンは「僕はもともと、トライアウトの時点でファイターズが獲得すればいいのにと思っていました」と事もなげだ。新庄氏は2020年12月、引退後14年目・48歳にして現役復帰を目指し、12球団合同トライアウトに参加。適時打を放ってみせたが、獲得に名乗りを上げる球団は現れなかった。

「新庄は“全力でやることこそカッコイイ”と考えるタイプです。現役時代、ベンチから外野守備へ向かう際に全力疾走し、これに同じ外野手の稲葉(篤紀・現GM)、森本稀哲(現野球評論家)がならい、3人そろって走るようになった。そこがファイターズのいい所といわれるようになりました」と島田氏は語る。

「ところが、1人抜け、2人抜け、そういう雰囲気は薄れていった。いつの間にか、凡ゴロを打った際に全力疾走を怠り、変に手を抜く選手が散見されるようになった」と指摘する。「そういう意味で、新庄は最高の監督だと思います。チームを雰囲気から立て直してくれるでしょう」と確信している。

 ビッグボスに戦略・戦術を駆使する印象はないが、その部分でも島田氏は「彼は全部考えながらやっています。派手ですっ飛んだパフォーマンスも、実は全部考えながらやっていた。こう言うと本人は凄く嫌がるのですが、本当は戦略家ですよ」と評する。

 島田氏が牽引するJDリーグは今年3月28日、ZOZOマリンスタジアムで記念すべきリーグ開幕戦(ビックカメラ高崎-トヨタ自動車戦)を行う。実は新庄監督から「恩返しでソフトボールのために何かやりたい」と申し出を受けたが、熟慮の末に断った。「気持ちは凄くうれしかったけれど、今ビッグボスにやってもらうと(話題を)全部持っていかれてしまう。(新庄フィーバーが)収まってからにしようということになりました」と説明する。その場限りの観客を集めても意味はない。足元を見つめながら、着実にソフトボール人気を盛り上げていく考えだ。

 日本ハムではチームの北海道移転を成功させ、“新庄パフォーマンス”を陰で支えた島田氏。ソフトボール界に身を投じても、黒子に徹する姿勢は変わらないが、胸に秘めた活性化への思いは熱い。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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