戦力外通告の1年前に“引退決断” 元鷹ドラ1を決心させたモイネロに喫した三振

チームメートだったモイネロとの対戦で決断した現役引退

 この年、2軍で打率.295、8本塁打をマーク。1軍でもわずか5試合の出場だったが、5打数3安打1本塁打と結果を残し「2018年はすごくバッティングの調子がよくって、自分のMAX出せた」というのだ。ただ、なかなか1軍でチャンスは巡ってこずに「これでもう戦力外だな、と思いました」と覚悟した。

 身の振り方まで思案していた。現役を続けるか、それとも退くか。「他球団でチャンスがあるなら挑戦しようか、それとも辞めようか、と」。そんな時に、ある機会が巡ってきた。クライマックスシリーズに向けた1軍の調整のための実戦練習だった。対戦したのはリバン・モイネロ投手。江川氏は「絶対これだな、と思ったんです。今日で決めようと」と、この対戦に臨んだ。

「多分、他球団に行ったら、モイネロとも対戦することになるだろうと思ったんです。2軍だから打てていただけかもしれないので、本物の投手と対戦して決めよう、と」。結果は三振。踏ん切りはついた。「これじゃ多分、他球団に行っても迷惑をかけると思いましたね。2軍にいるときにはちょっと自信はあったんですけど、無理だと思って、オファーが来ても辞めようと思いました」。結果的にこのオフに通告を受けることはなかったが、これが1年後の決断にも影響を与えた。

 翌2019年も2軍では打率.272を記録したものの、1軍での出場は11試合に終わり、日本シリーズの出場資格者40人からも外れ、予感した。「何の前触れなく電話はかかってきます。ただ、シリーズの出場資格メンバーに入らなかった段階で(戦力外だと)分かっていましたね。まあ、その前から分かっていましたけど……」。10月20日に電話が鳴った。球団事務所に来るように、という連絡で全てを悟った。

「こんなに清々しい顔してくる選手初めて」球団幹部も驚いた戦力外通告の瞬間

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