無名だった岩崎優&原口文仁を発掘 元阪神スカウトが見出した“プロ向き”の素質
岩崎の東京五輪出場は「驚きました、期待以上です」
2013年ドラフト6位で指名した国士舘大の岩崎、同3位の東農大の陽川を見出したのも、原口と同じく神宮第二球場だった。当時国士舘大と東農大が所属していた東都大学リーグ2部のメーン球場だったからだ。神宮球場の隣に併設されていた第二球場は、両翼91メートルと狭く、2019年11月に一帯の再開発のために閉場したが、なんとも味わい深い景観だった。
岩崎は大学時代も専ら中継ぎ。中尾氏は「手足が長くて、球持ちが長い。MAX135キロ程度だったが、球速の割に空振りを取れる投手だった。初速と終速の差が小さいのだろうと思った。伸びる可能性があるので、6位まで残っていたら指名してほしいと上司に頼んでおきました」と振り返る。ドラフト前、岩崎に対して調査書を提出していたのは、阪神を含めて2球団だけだった。指名後には岩崎の父親から、静岡・清水東高時代に片道8キロの道のりをランニングで通学していたというエピソードを聞かされ、「なるほど、確かに体の軸がしっかりしている」と感心した。
ただ、その岩崎が昨年夏の東京五輪に出場し、貴重な中継ぎとして金メダル獲得に貢献するまでになるとは、担当スカウトだった中尾氏も予想していなかった。レギュラーシーズンでもチーム最多タイの62試合に登板し、3勝4敗1セーブ41ホールド、防御率2.65の好成績。「日本代表だなんて、正直言って驚きました。遥かに期待以上です。球質の特長はそのままに、ストレートが速くなったことが要因だと思います」と分析する。
陽川については「粗い所もあったが、パンチ力が抜群。強烈な打球を放っていた。守備はどちらかと言えば下手だったが、これはプロに入ってからでも上手くなるし、肩は強かった」と見込んでいた。右の長距離砲を求めていたチーム事情もあって、上位の3位指名となった。昨季の陽川は1軍で41試合出場、打率.174、2本塁打6打点。30歳となり、プロ9年目の今季は勝負の年となる。中尾氏も「課題は確実性。背水の陣で頑張ってほしい」とエールを送る。
昨季の阪神は、1度は独走態勢を築きながら、後半に失速し16年ぶりの優勝を逃した。中尾氏は「今季は2年目の佐藤輝明がどれだけ成長を示せるかが最大のポイント」と見ている。もちろん自身が見出した選手たちの動向にも、熱い視線を注ぐ。