田澤純一が感謝する松坂大輔との出会い 引退試合で感じた“去り際の美学”
万全ではない姿を見せた引退試合に「覚悟がいったと思います」
その翌シーズンに田澤はトミー・ジョン手術を受け、リハビリに専念。すると2011年には今度は松坂氏がトミー・ジョン手術を受けることになった。田澤がリリーバーとしてメジャーに定着した2012年、松坂氏は8月下旬にメジャー復帰し、ここで再び一緒にプレーした。
同年オフにフリーエージェントとなった松坂氏はインディアンスに移籍したため、2人が1年を通じて同じチームで戦い続けることはなかった。それでも何度か食事に誘われ、同席する機会に恵まれたというが、グラウンドを離れても松坂氏は「人柄が素晴らしく、人間的に大きな人です」と憧れが揺らぐことはなかった。
2021年10月19日。松坂氏の引退試合を、田澤は台湾で見た。明らかに状態が良くない肩肘で、最速118キロという山なりのボールを投げる姿を見て「本当にすごい人だ」という想いを新たにした。
「最後、引退試合であの投球を見せたのは、僕はすごいと思いました。絶対に痛いはずだし、球速も出ない。あの姿を見せるのは覚悟がいったと思います。だからこそ、あの姿を見せて引退した松坂さんは、本当にすごいと思います」
松坂氏と出会えたことは「僕の野球人生における財産の1つ」だという。憧れの人から受け継いだ財産を、今度は次の世代に引き継げるよう、田澤もまたマウンド上で腕を振り続ける。
(佐藤直子 / Naoko Sato)