2軍監督、スカウト部長は“プロの入口” 元巨人・岡崎郁氏が“出口”のために歩む今
飲食店も経営、YouTubeチャンネルも開設し、幅広く活躍
同時に、野球漬けの生活から初めて実社会へ出ていくにあたっての最低限の教育も行いたいと言う。「受け入れてくださる企業をそろえて、今年中には会社を立ち上げたい。まずは今年の秋、引退する100人くらいの選手のうち、何人かでも紹介できたらと思っています」と意気込む。
一方、飲食店経営も今後の人生のテーマの1つだ。「野球界にいると、付き合いは広いように見えて、実は非常に狭い。一般社会の友達はなかなかつくれない。お店を経営するようになって、いろいろな人と話すことで人生が豊かになっている実感があります」と顔をほころばせる。
2019年11月には、東京・新橋に鉄板焼きの「おか福」をオープンさせたが、現在は新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置に伴い休業中。過去には現役引退後の2000年から04年まで、東京ドームの近くで焼肉「香おる」を経営した経験もあり、この時も狂牛病騒動が日本社会を襲った。人間関係が広がる喜びとともに、飲食店経営の難しさも実感している。(2005年にメジャーリーグ・ヤンキース傘下にコーチ留学することも決まり、焼肉店は閉店した)。
また、今年2月2日付で学生野球資格を回復した。高校生や大学生の指導が可能となり「そういうお話をいただければ、もちろん前向きに考えたい」。昨年12月には自身のYouTubeチャンネル「アスリートアカデミア(アスアカch)」を開設し、豊富な経験を生かして自己発信にも力を入れていく。
「自分の天職は、野球ではなかったのかもしれない」と、意外な言葉を口にする。
「自分にとって一番得意なものを天職と呼ぶなら、僕は野球以外のことをしてこなかったのだから、逆説的に言えば野球でなかった可能性もある。自分にこんな才能があったのか、こんなことができたのかと発見することができたら、とてもうれしい。見つからないかもしれないし、そもそも無いかもしれないけれど、探してみないとわからないですよね」
60歳にして今後の人生に胸を高鳴らせている。
「年齢的に、人の役に立つ仕事をしていきたい。30代や40代は自分のためにガツガツいかなければいけないと思うけれど、僕がこの年になってまだガツガツしていたら、ちょっと“痛い”でしょ」
穏やかな笑顔を浮かべた。現役時代に若い女性ファンを魅了したクールな表情とは、またひと味違った深みがそこにある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)