「親から仕送りの選手も」 西岡剛が“ホリエモン球団”監督を受諾した独立Lの現状
ルートインBC栃木で得た学び、変えたいと思った選手を取り巻く環境
2018年に阪神を戦力外となった後、西岡はルートインBC栃木からNPB復帰を目指した。だが、元首位打者であっても道は厳しく、「今から選手としてNPBに行くのは不可能に近いこと」と現実を見る目は冷静だ。今の自分に何ができるのか。そう考えた時、真っ先に浮かんだのが「独立リーグ選手が置かれる環境を変えたい」という想いだった。
栃木で過ごした3年は、西岡にとって実社会について学ぶ貴重な日々だった。創設間もないながらもチーム運営を軌道に乗せた球団経営陣の手腕、選手とファンではなく同じ人間として叱咤激励してくれる地元の人々との繋がり……。栃木に来なければ知ることのなかった世界の中でも、西岡に強い印象を残したのが選手を取り巻く環境だ。
「野球で稼いだお金で生活したり、家族を養えたりする人を、僕はプロと呼ぶと思います。親から仕送りしてもらう選手もいるのが独立リーグの現実。これではプロという名のプロではない人になってしまう。さらに、僕はNPBを目指さない独立リーガーがいてもいいと思うんですよ。正直、独立リーグで2年、3年とやっていれば、選手は『もうプロは無理だ』と自覚している。でも、野球が好きだし、野球を続けたいと思う選手がいる。こういった独立リーグの現状を何とかしたいという想いは、年々大きくなっていました」
そんな時に届いた新球団入りのオファー。しかも、監督としてチームの活動方針は一任される。「チャレンジする環境を与えてもらった。自分は挑戦するだけ」と飛び込んだ。
監督就任を決断してから、頭の中には様々なアイデアが浮かんでいる。選手に試合の勝敗は求めない。求めるのは「自分のやるべきプレーに集中すること」。個々が役割を果たし結果を出せば、自ずと勝利はついてくる。そして、そのための過程はどんな形であってもいいと考えている。
「練習しようがしまいが、試合で結果を出す選手を使おうと思っています。例えば、富士山の頂上に12時に集合しようという時、車で行っても、徒歩で行っても、ヘリコプターで行っても、時間通りに指定の場所に集合できればいい。独立リーグのチームはこの発想でいいと思うんです。野球での稼ぎが少ない選手は練習時間を早めたり短期集中メニューにしたり工夫をして、バイトをする時間を作ればいい。次のキャリアを考え始めているなら、資格を取ったり学校に通う時間を作ってもいい。逆に野球に集中したいというなら、誰よりも練習に打ち込めばいい。そこまでの過程がどうであれ、結果を出すのがプロですから」