野球と勉強の両立を目指す子どもに… 東大の元監督が勧める「やる気アップ」の方法

東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:編集部】
東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:編集部】

「記録が良くなっていけば、俄然やる気を出す」

 前東大野球部監督の浜田一志氏は、部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長としての顔も持つ。長年、子どもたちに文武両道の実践方法を伝授してきた浜田氏に勉強、野球に共通する、小学生をやる気にさせる「マル秘」の目標設定法を聞いた。

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 小学生は成長途上ですから、何をやっても必ず伸びます。だから子どもが自分の「伸び」を実感して、よりやる気になるような指標を設定をしてあげればいいのです。

 野球であれば優勝を目指すとなると、なかなか達成するのは難しい。でも塁間走のタイムにしたらどうでしょう? 小学生のうちなら、どんなに練習をさぼっていても、勝手に体が大きくなって、どんどんタイムが伸びていきます。前回より今回、今回より次回と記録が良くなっていけばそれを励みにして、俄然やる気を出す。ゲームのレベルアップと同じことです。

 そうやって足の速さだとか、遠投の距離だとかを毎回計測して表にするなどしてまとめておきます。それを見返すことで、子どもが自分の成長度合いを実感するわけです。子どもごとに優劣が出てきますが、個人の伸び率を見るものなので、順番はつけてもつけなくても構いません。

 勉強も同じで、偏差値を指標にしてしまうと下がる子も出てきちゃうので、新幹線の駅をいくつ言えるとか、歴史上の人物を何人言えるかとか、算数ドリルの正解率でもいい。子どもが覚えていく一方のものを指標にしてあげるんです。一番良いのは身長、体重ですよね。定期的に測定して「身長伸びたね、すごいね」なんて褒めてあげれば、当たり前のことだけど子どもたちは嬉しいんです。

「九九素振り」のタイムを指標にするのもいいかもしれません。これはご近所の学童野球の子たちに教えてあげて割と好評だったんですが、掛け算の九九を言いながらの素振りです。「いんいちが」でトップを作って、「いち」といいながらスイングする、これを9の段まで81回スイングする。7の段、8の段になるとスピードが落ちてきたりしてね(笑)。掛け算を習うのは2年生なんですが、上級生が、覚えたての下級生に教えてあげれば復習にもなりますね。

 そうやって野球でも、勉強でも大人が工夫して、成長を実感できる指標を設定してあげることで、子どもたちはレベルアップするモチベーションをキープし続けることができるんです。

○浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾「Ai西武学院」を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。2015年の東京六大学春季リーグで東大の連敗を94で止め、2017年秋には30季ぶり勝ち点を挙げた。

(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

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