野球を続けながら塾通いは困難? 東大の元監督が勧める“有効な活用法”とは

東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:編集部】
東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:編集部】

中学でオール3からオール4に引き上げるには「1年はかかる」

 東大野球部元監督で、部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長を務める浜田一志氏に文武両道実践のコツを聞くシリーズ。今回は「野球をやりながらの塾通い」について。一口に受験と野球の両立といっても、中学と高校ではその実情は大きく異なる。

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 中学受験をするならば、塾に通わないと厳しいですね。中学受験の問題って、都立高校の入試問題より難しいんです。例えば東京の地名の問題で調布にはどういう意味があるか、とかね。古代の税金である租庸調の「調」として「布」を朝廷に納めていたから、というのが答えですけど、そんな問題、小学生が普通に勉強しているだけで分かるはずがない。塾で出題傾向、対策を教わらなければ、合格するのはちょっと難しいですね。

 だからといって野球は諦めましょうというのではなく、最近の塾は色々と経営努力していて様々なニーズに応えてくれますから、練習や試合で授業に遅れても対応してくれたり、4教科全部取らなくても、不得意な算数と理科だけを受け入れてくれるところもある。塾に受験勉強と野球を両立したいということを伝えて、相談してみると良いと思います。

 高校受験は出題範囲が教科書だから、塾に通わなくてもなんとかなります。それでも中学3年生の7割くらいは塾に通っているはずです。中学野球をやりながら塾に通う子の目的としては、内申点が野球推薦の基準に足りないので何とかしたいというのが多いですね。

 私の塾のエリアでは早実の推薦がオール4なので、野球で進学を考えているならそこまで引き上げておきたいというのはあるんでしょう。ただオール2をオール3に引き上げるよりも、オール3をオール4に引き上げる方が難しいんです。まずは提出物をちゃんと出しましょうということから始まって、オール4ならテストで1教科平均75点以上は取らなくちゃいけませんからね。全部1ずつ引き上げるのには、1年はかかりますかね。

 面接と小論文の指導だけしてほしいという子もいます。面接なら所作や聞かれることが決まっていますし、小論文はあまりあれこれ内容を詰め込みすぎないとか、自分の体験を盛り込むとかコツがありますから、それを教わる。1週間に1回来てもらって、2か月くらいで仕上げます。面接も小論文も初めてだと見当がつかないから、子どもも保護者も不安なんでしょうね。合格圏内にいる子でも、お守りみたいな意味で来ている子が半分くらいいますよ。

○浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾Ai西武学院を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。2015年の東京六大学春季リーグで東大の連敗を94で止め、2017年秋には30季ぶり勝ち点を挙げた。

(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

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