恐れ多い「イチローバット」振りまくった強心臓 2年生ホープが最後に見せた“一矢”
イチロー氏に「お腹が出ている選手は野球選手ではないですか?」
日頃から実にユニークなキャラクターだ。昨年11月末、イチロー氏(マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が国学院久我山を直接指導に訪れた時だった。フリー打撃を披露した際、使用した黒い木製バットを残していった。「このバットでボールを打つのはやめてね。素振りはしていいから」との言葉とともに。
とはいえ、あまりにも恐れ多く、ナインのほとんどが“イチロー・バット”に触ることもできない中、尾崎直輝監督が許可したその日からただひとり、早速握ってブンブン振り始めた男こそ、この鈴木勇である。
しかも、練習中にイチロー氏へ個人的な質問を投げかけ、アドバイスをもらっていた。チーム最重量の95キロ(身長は173センチ)を気にしてか、“イチロー語録”から引用する形で「お腹が出ている選手は野球選手ではないですか?」と聞いた。すると、イチロー氏は「いや、僕自身はお腹が出たら引退する、と言ったんだよ」と説明。「いいんだよ、それぞれの特徴なんだから」と返答してくれたという。
鈴木勇は今大会、1回戦と準々決勝で一塁手としてスタメン出場したが、この日はベンチスタートだった。尾崎監督は「ここ数日肩に力が入った状態で、代打の打席もそうでしたが、最後の打席では彼らしい素直なスイングができていた」と説明。「彼は素晴らしいバッター。ひと回りもふた回りも成長して、この甲子園へ一緒に戻って来たい」と期待を込めた。夏にはどんな選手になっているのか、今から楽しみでならない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)