“ナックル姫”の兄が野球室内練習場を設計 野球を続けた先で見つけた異色の経歴
ボートレーサーを目指して1年勉強、入試は合格も10キロの減量が壁
吉田さんは専門学校卒業後、ボートレーサーを目指して1年ほど勉強した。そして、一般入試に合格。だが、高い壁となったのは体重だった。当時、吉田さんの体重は65キロ。ボートレーサーになるには10キロの減量が必要だった。「体格が良かった分、体重を落とせませんでした。飲まず食わずで減量して最後は水も抜きましたが、56キロが限界でした」。野球では長年、体を大きくし、筋力をつけてきた。短期間で体重を10キロも落とす正反対の要求をされた体が、期待に応えられないのは当然だった。
23歳で地元のリフォーム会社に就職した吉田さんは、仕事にのめり込んだ。「衣食住の住を扱う仕事は、身に付けた知識や経験をお客さんへダイレクトに還元できます。大変なところはありますが、感謝されるのがうれしかったです」。25歳で独立し、住宅のリフォームや建物の設計などをしている。「BAY SIDE LINE」では設計を担当。シニア時代のチームメートで施設の代表を務める高橋悠太さんらと、再びチームを組んで練習場を作り上げた。
選手として本気で野球と向き合う生活は専門学校で終えた吉田さん。それでも、妹・えりさんの練習には付き合ってきた。子どもの頃から兄妹で一緒に練習して互いを良く知っているだけでなく、現役時代は捕手一筋だった吉田さんは、えりさんの練習相手に最適。だが、ナックルを捕球するのは簡単ではなかった。
「大きく揺れたり落ちたりするので、なかなか捕れませんでした。頭に直撃したこともありました。捕手が捕れないボールを投げるのは、すごいと思っていました」
「BAY SIDE LINE」のオープンを祝うイベントの始球式では、吉田さんが妹・えりさんの投球を受けた。もちろん、球種はナックル。何とか捕球して兄の面目を保ち「今でもナックルが投げられるのは、まだ現役ですね。よけながら捕るのがやっとでした」と笑った。
えりさんにプレーでは勝てないかもしれないが、吉田さんの野球への情熱は現役だ。今回作った室内練習場は、まだスタートだと話す。「いい施設が完成したと思っていますが、まだまだやりたいことが出てきました。作りながら自分自身がワクワクしていましたし、利用する人たちがワクワクする空間を今後も作っていきたいです」。関わり方が変わっても、野球への愛情は変わらない。
(間淳 / Jun Aida)
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