阪神・佐藤輝の1号弾は昨年なら「空振りやファウル」 阪神OBも認める進化した打棒
超人気球団の4番を務めることに「背負いこみ過ぎなければいい」
開幕から9連敗でセ・リーグワースト記録を更新していた阪神が、5日に本拠地・甲子園球場でDeNAを4-0で破り、今季10試合目にして初白星を挙げた。今季全試合で4番を務めている佐藤輝明内野手は1号2ランを含む4打数2安打2打点で勝利に貢献。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、この日の“サトテル”に格段の成長を見た。
佐藤輝は1回、チームが1点を先制した直後の1死一塁で第1打席に入ると、DeNA先発・ロメロが投じた初球の内角高め速球をひと振りで仕留めた。打球はやや詰まったようにも見えたが、右翼フェンスを越え、阪神ファンが陣取るスタンドへ飛び込んでいった。「春季キャンプから取り組んでいるものが、いい方向へ行っている証しだと思います」と野口氏は評する。
佐藤輝はプロ1年目の昨季、シーズン前半は打棒を振るったが、後半に入ると相手投手の執拗な内角攻めに苦しみ、セ・リーグワースト記録の59打席連続無安打を記録するなど失速した。「この日の1発は甘めのコースだったとはいえ、昨季の59打席無安打の間には空振りしたりファウルになったりしていたボールでした」と野口氏は指摘する。
8回先頭での第4打席では、DeNA5番手の伊勢に3球目まで内角高めへ148~149キロの速球を集められ、カウント1-2と追い込まれたものの、4球目のフォークが真ん中高めに浮いたところを逃さず、逆方向のレフト前にヒットを放った。昨季は徹底した内角攻め、もしくは内角を意識させた上で外角低めの変化球を振らせるのが、他球団の基本的な“サトテル攻略法”だった。野口氏は「狙い球を1本に絞り切ることができないカウントで、変化球へのマークの度合いを上げながらうまく対応しました。ただ振るだけでなく、昨季以上に相手の配球などを考えながら打席に入っていることがうかがえました」とうなずいた。
今季は開幕から4番を張り続け、チームが勝てない中でも、5日現在で打率.308(39打数12安打)と上々の数字を残している。ただ、野口氏は「阪神は超人気球団で注目度が高く、4番が打てなければ袋叩きにあいかねない。その中で打線の中心を担う自覚はもちろん必要ですが、思い込み過ぎてもよくない。そのさじ加減が非常に難しい。佐藤輝が今後、背負い込み過ぎなければいいなと思います」と一抹の不安も口にした。
野口氏が阪神に在籍した2003年から08年までの6年間、主に4番を務めたのは金本知憲前監督だった。「技術もメンタルも、全てにおいて4番にふさわしかった。佐藤輝も阪神の4番を務める以上、金本さんのようになってほしいですね」。“虎の4番道”を歩き始めた佐藤輝が、いかに試練に打ち勝ってくかが見ものだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)