試合後に1着になっていた「27」のジャージ シカゴの街が見た鈴木誠也のデビュー戦
鈴木のジャージを購入したライルさん「絶対にやると思った」
■カブス 5ー4 ブルワーズ(日本時間8日・シカゴ)
4月7日(日本時間8日)、“ウインディ・シティ”の愛称で呼ばれるシカゴの街に、この時期特有の冷たい強風が吹き荒れることはなかった。待望の開幕戦を迎えたカブスの本拠地リグレー・フィールドは、早朝から活気づいていた。
左翼スタンド後方の北シェフィールド通りと西ウェーブランド通りが交差する真横にあり、熱狂的なカブスファンのたまり場として知られる「マーフィーズ・ブリーチャーズ」の店主は、地元テレビ局のカメラの前でホットドックを手際よく作っていた。その向かいのトレーラーでは5歳の時からカブスのグッズを売りさばいているというビクター・ロドリゲスさんが商品の陳列に大忙し。鈴木誠也について聞くと、意外な答えが返ってきた。
「ここでは実績のない選手のグッズは売らない。それが俺の主義。フクドメが来たときもそう。売れ筋しか扱わないと言えば、それまでだけど、未知数はあくまで未知数だからさ」
ロドリゲスさんは市当局にも許可を得て、半世紀にわたって商売を続けているが、豊富な品揃えとなれば、球場内にあるショップになる。リグレー・フィールドでも売り場面積が最も広いショップで、背番号「27」のジャージを買う青年を見つけた。インディアナから両親を乗せ、車で2時間半かけて来たクーパー・ライルさん。大谷翔平の活躍が購入理由の背景にあったと言う。
「僕はカブスを支える選手なら誰であろうと応援します。スズキは確かにこの国では実績はありませんが、もうすでに新人王候補に名前が挙がっていて、SNSでも結構、その話題を目にしてます。自分なりに日本での活躍度を調べて、この国でも絶対にやると思ったからです。実は、こう思えるのも、ショウヘイ・オオタニなんですね。メジャーに来た当初、スズキと同じような感じでした。その彼が昨年はMVPを獲り、有名スポーツ誌の表紙を飾る存在になっていったじゃないですか」
ライルさんがこう話した4時間後、全打席の登場曲に自ら選んだオルタナティブ・ロックバンド「イマジン・ドラゴンズ」の『サンダー』に背中を押された鈴木は、5回の第2打席でレフト前にメジャー初安打を放ち、3万5千人を超える地元ファンから熱い声援で称えられた。
試合後、閉店間際のショップに行くと、ハンガーにかかっていた背番号「27」のジャージはわずかに1着のみ。走塁でもセンスを発揮し、チームの勝利に貢献した「セイヤ・スズキ」の存在は、これから日を追うごとにシカゴの地元ファンに浸透していくのだろう。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)