「MAX150キロって言ってみたかったけど…」新庄監督に“下手投げにされた男”は今?

日本ハム・鈴木健矢【写真:荒川祐史】
日本ハム・鈴木健矢【写真:荒川祐史】

お手本は渡辺俊介…「ビッグボスも苦手だったんですよね?」

 キャンプでは序盤のブルペンで新庄監督に「(打者から)見やすくなっているから、ちょっと見づらくしない?」と突然、アンダースローへの転向を進められた。武田勝投手コーチとの突貫作業ののち、ロッテとの練習試合で1回無失点と好投し、注目された。その後は『アンダースローとは何か?』という“自主研究”に励んだ。希少価値の投法で、近年活躍したのは元ロッテの渡辺俊介(現かずさマジック監督)くらい。動画サイトに上がる日本シリーズの投球映像を見つめ、著書「アンダースロー論」も求めた。

 渡辺は、腕を振るとマウンドの土が舞い上がるほどの「リリースの低さ」が特徴の投手だった。さらに「間の使い方もフォームもきれい」と手本にしたい部分ばかりだった。さらに調べていくと、あることを知った。「ビッグボスが苦手にしていたんですよね?」。新庄監督と渡辺の通算対戦成績は6打数無安打。指揮官はやがて、渡辺が先発する日には先発を外れるようになったほどだ。アンダースローのいやらしさをよく知る新庄監督に、転向を勧められたという事実は、鈴木を勇気づけた。

 きれいな正統派のフォームで投げてみたいという思いが、以前はあった。ただ出番をつかむため、木更津総合高(千葉)時代から変則投法を続けてきた。サイドスローから勢いのあるボールを投げ込む投手として、プロ入りの夢をつかんだ。

 下から投げるようになって、捨てた夢がある。「プロでMAX150キロと言ってみたかったんですけどね……」。ここまでの最速は149キロ。あと1キロというところで、今一度の転機が来た。「150キロを投げて短い選手生活で終わるのなら、ボールは遅くても長くプロ野球選手でいたい」と、現実を取った。

「見てないものはないというか…」異色経歴のコーチにも恵まれた

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