なぜ野球用品は高い? “カラクリ”生む現状に疑問…初心者用グラブを安く売るワケ

初心者用グラブをはめる吉村社長【写真提供:フィールドフォース】
初心者用グラブをはめる吉村社長【写真提供:フィールドフォース】

なぜ4400円で利益出る?「自分たちの工場でつくったものをダイレクトにお客様に」

 今回開発した初心者用でも、プロ仕様でも、グラブは製造の工程は大きく変わらないという。平らな革を裁断して、30個近いパーツを縫い合わせる作業は全て人の手。つまり、人件費を削るのは難しい。それでも、4400円で販売できる理由を吉村社長は説明する。

「私たちの強みは、自分たちの工場でつくったものをダイレクトにお客様に届けられるところにあります。経費を削減して、適正価格でお客様に届けられます」

 適正価格――。決して安売りではなく、「適正な利益」があると繰り返す。そして、「お金がないと野球はできない」と言われる少年野球の現状を変えようとしている。

「各メーカーは宣伝効果の一環でプロ野球選手と契約を結んで、年間20~30個のグラブを無償で提供しています。企業は利益を上げなければならないので、小・中・高校生が購入するグラブの価格に落とし込んで、かけたお金を回収します。野球用品は高すぎます。私たちも含めてメーカーが努力しないと、野球人口の減少に歯止めがかかりません」

 子どもの数が減っている以上、野球人口の減少は避けられない。ただ、子どもが野球を始めるハードルの1つに、グラブやバットなど決して安くない用品の価格がある。ピラミッドの頂点であるプロの姿が、野球の普及に貢献しているのは間違いない。だが、ピラミッドを支える少年・少女が購入する野球用品の価格に影響が及び、競技人口が増えなければ本末転倒だろう。フィールドフォースが「品質には自信があり、適正な利益もいただいている」と話す4400円のグラブは、野球界への提言と挑戦でもある。

(間淳 / Jun Aida)

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