「鈴木一朗」が「イチロー」となった瞬間　仰木監督に進言、名付け親が明かす“舞台裏”

新井宏昌氏は、当時賛否両論があった振り子打法に理解「これは凄くいい」

　南海、近鉄で通算2038安打を放ち、オリックス、ソフトバンク、広島でコーチを務めた新井宏昌氏。指導者人生のスタートとなった1994年には、のちにメジャーで活躍するイチロー氏（マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター）との出会いがあった。本人の証言をもとに振り返っていく連載の第5回は「イチロー誕生の瞬間」。

　新井氏は1993年オフ、オリックスの監督に就任する仰木彬氏から電話を受けて1軍打撃コーチを務めることになった。就任1年目の1994年に沖縄・宮古島で行われた春季キャンプでは、高卒3年目を迎えた鈴木一朗の姿に目を奪われた。右足を高く振り上げ、振り子のように動く打撃フォームは当時、賛否両論あったものの、新井氏は理解を示していた。

「当時の考えではボールを待ち受けて打ちに行くのが当たり前。だが、彼は自分から動きを入れて打ちにいくので、準備がしっかりできて遅れることはなかった。これは凄くいいと。体が流れずステップした右足もしっかり踏ん張ることができていた」