「スピードに関しては諦めた」 130キロ台の直球で打者を翻弄…ロッテの“遅球左腕”
大学時代に球速アップに取り組むも「全然速くならなくて…」
“球の遅さ”を自覚しだしたのは中学生の頃。「気が付いたら、全然球が速くなってないやって」。他のチームのエースの球速は自分よりも10キロほど速く、そこから薄々「自分の球って遅いのかな……」と思うようになった。大学進学後にはプロ入りも見据え、球速アップに取り組んだが、どうにも球速は上がらなかった。「とにかくパワーをつけたら速くなるだろうと思ったんですけど……全然速くならなくて、だったら目指さなくていいやって」。球の遅さを長所と捉え、育成選手としてプロ入りした。「スピードに関しては諦めたというか、今は(球速を上げたいという気持ちは)ほどんどないです」と苦笑いする。
投球の“間”や、腕の振り……。球速で押すことはできない分、制球やボールのキレは人一倍求められる。「タイミングをずらすことを大事にしていて、緩急もそうですけど、相手バッターのタイミングの取り方とかも観察して、そこで抑えられるようにという工夫はしています」。100キロ台のカーブ、120キロ前後のカットボールとチェンジアップを駆使する。「緩い球を投げることに怖さとかは全然ないです」。だからこそ、腕が振れ、緩急が生きる。
1軍初先発となった14日の試合は、最速164キロを誇る佐々木朗希投手が投げた翌日。“真逆”のピッチングスタイルの男がマウンドに上がった。初回に2安打を浴び1失点したが、以降は無安打。変化球でタイミングを外して、何度もバットの先に当てさせた。この日の直球の平均球速135.1キロで、最速は139キロだった。勝利とはならなかったが、1軍のマウンドで持ち味を存分に発揮した。
将来手にしたいタイトルには「沢村賞でお願いします」とニヤリ。佐々木朗の球速は「アニメみたい」と表現するが、球界全体の平均球速が年々上がっていく中で、平均球速130キロ台の軟投左腕が沢村賞に輝けば、それもまた、アニメのようだ。