「自分で考える野球」の意外な原点 全国連覇した少年野球監督の“指導論”とは

ノーサイン=脳サインが「多賀野球」の特徴

 辻監督は、選手に戦術を教え込んでいる。選手と保護者を集めて、ホワイトボードを使って説明する座学。幼児や小学低学年には理解するのは難しいが、選手が飽きないように冗談を交えながら根気強く続ける。小学4年生くらいになると、自分で考えて動く多賀野球の基礎ができ上がるという。

「子どもたちは上手くなる楽しさだけではなく、考えるおもしろさが分かってきます。高学年になると次の動きや次の次の動きが頭に入っているので、試合でサインを出さなくても、子どもたち同士でサインを出し合っています」

“ノーサイン=脳サイン”野球こそが「多賀野球」。先をイメージして自ら動く。試合に必要な知識や技術が身に付いているため、練習では「試合で使えるかどうか」を常に意識する。どのチームも行っているフリー打撃やノックといったメニューでも、練習で得られる効果に差が生まれるのは明らかだろう。

 辻監督は20歳の時にチームを立ち上げ、今年で34年目を迎えた。選手自らが考える野球、自主性を伸ばす指導方針のきっかけは、25年ほど前の出来事だった。ある日、三輪車に乗った息子2人とカルガモ親子のように散歩する「小旅行」をしていると、自転車に乗った高校生が近くを通った。そして、その高校生が空き缶を捨てて、そのまま走り去ったという。

「バットを振れ」ではなく、自ら振りたくなるような指導を心掛ける

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