名門・報徳学園の指揮官が取り組む改革 新入生の“名物練習”を廃止したワケ

報徳学園の練習風景【写真:橋本健吾】
報徳学園の練習風景【写真:橋本健吾】

厳しい上下関係は消滅しつつあっても「謙虚さは持たないといけない」

 限られた時間や環境の中で、いかに成長できるか。試行錯誤を繰り返しながら過去の良いところは残しつつ、時代に沿った練習方法を取り入れてきた。その中でも「根性=悪という考えは違うと思っています」と語る。

「勿論、体罰や意味のない練習はダメですが、しんどくて辛い練習は生徒たちの“素”の部分が出る。体力の限界がきた時に人間の本性は分かる。それはグラウンドでも、劣勢になった試合でも同じ。うわべだけの付き合いでは仲良し集団になってしまう。人間同士でぶつかりあって意見を口にすることは野球を辞めたあとでも、必要なことだと思う。

 よく『俺らの時代は○○だった』と言う人がいる。例えば1000スイング、1000本ノックを本当に1回も気を抜かずにやっていたのか? と言われれば多分そうじゃない。100スイングを本気でやる方が、根性がいるんですよ。根性という言葉にアレルギー反応を起こしているだけで。実際に今の子どもたちの方が、そういった部分はしっかりしていると感じます」

 一方で時代とともに生まれた弊害もある。先輩が試合に向け道具を準備をしている横で手伝わない後輩。“タメ口”でコミュニケーションを取る姿がよく見られるという。厳しい上下関係がなくなりつつある現在の環境に「謙虚さは持たないといけない。それは社会人になって気付いても遅いし、本人が一番損をする。それを忘れたら誰も応援してくれない」と不安も口にする。

 わずか2年半の高校野球生活で求められる“勝利と育成”。「はっきりとした正解はないが、指導者の自己満足になってはいけない」。伝統校を引き継いだ大角監督の挑戦はまだ始まったばかりなのかもしれない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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