思い起こす34年前の“ノーノー” 東海大札幌・渡部を見るスカウトが自身と重ねた過去
阪神スカウトを務める葛西稔氏も法大時代にこの大会で“ノーノ―”達成
目立たなかった左腕の突然の躍進には、ネット裏に陣取るプロ野球のスカウトも目つきを変えた。中でも、阪神でアマスカウトを務める葛西稔氏は、自身の過去を思い出しながらの視察となった。
サイドスロー右腕として阪神で活躍した同氏は、法大3年時の1988年春、東京六大学リーグを制してこの大会に出場。1回戦の近大工学部戦で、史上4人目となるノーヒットノーランを達成した。
変則投法だった自身の快挙を「初見だからね。やりにくかったんじゃないかな」と振り返る。終了後まで気付かなかった渡部とは違い、7回くらいから意識していた。来年以降のパンフレットには、葛西氏と同じく渡部も名前が刻まれる。「記録に残るからね。嬉しいだろうね」と我がことのように嬉しそうだ。
全国舞台で見せた“やりにくさ”は、利き手とフォームが大きく違うとはいえ、渡部にも共通するものがあった。
「(球の)出所が見にくいから、初見では打ちにくさがあったんだろうね。それに、縦のカーブと、チェンジアップの抜け具合もよかった」
昨年は、西日本工大の隅田知一郎(西武ドラフト1位)などがこの大会で活躍し、プロへの切符を手に入れた。本人は「まだ何も考えていない」と話すが、“偉業達成”に周りの目つきも変わりそうだ。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)