驚異のOPS1.100&長打率.720、復活遂げた左腕 セイバー指標で選ぶ5月のセ月間MVP

DeNA・今永昇太は5月6日に1軍復帰登板4試合でQS率100%、2勝を挙げた

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAを用いる。「RSAA=(リーグ平均tRA-選手個人のtRA)×投球回数/9」。ここでのRSAAはtRAベースで算出する。tRAとは被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計し、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 tRA={(0.297×四球+0.327×死球-0.108×奪三振+1.401×被本塁打+0.036×ゴロ-0.124×内野フライ+0.132×外野フライ+0.289×ライナー)/(奪三振+0.745×ゴロ+0.304×ライナー+0.994×内野フライ+0.675×外野フライ)×27}+定数

 各チームのRSAA上位2投手は以下の通り。

ヤクルト:今野龍太2.47、小川泰弘1.35
巨人:菅野智之2.73、戸田懐生1.90
広島:栗林良吏1.65、矢崎拓也1.08
中日:清水達也2.53、藤嶋健人2.38
DeNA:今永昇太7.12、伊勢大夢3.79
阪神:ウィルカーソン4.63、青柳晃洋4.17

 阪神投手陣の奮闘が目立った5月。その中でもウィルカーソン、青柳晃洋ら先発投手の貢献が光った。

ウィルカーソン:登板4、投球回26、3勝1敗、防御率1.04、QS率75%、奪三振率6.23、WHIP0.85

青柳晃洋:登板4、投球回30、2勝1敗、防御率1.50、QS率100%、奪三振率8.10、WHIP1.07

 上記2人以上にセイバー目線による評価で良い数値を示したのはDeNAの2投手だった。

大貫晋一:登板4、投球回25回1/3、3勝1敗、防御率1.07、QS率75%、奪三振率9.24、WHIP0.79

今永昇太:登板4、投球回27、2勝0敗、防御率1.67、QS率100%、奪三振率9.67、WHIP1.07

 上記4投手の打たれた打球内容を見てみる。

ウィルカーソン:ゴロ34、内野フライ7、外野フライ30、ライナー2、GB/FB0.92
青柳晃洋:ゴロ48、内野フライ2、外野フライ32、ライナー8、GB/FB1.41
大貫晋一:ゴロ35、内野フライ3、外野フライ17、ライナー4、GB/FB1.75
今永昇太:ゴロ27、内野フライ13、外野フライ27、ライナー5、GB/FB0.68

 tRAにおける評価軸に良い影響を与える内野フライの比率が最も高いのが今永だった。1軍登録が5月6日と1か月遅れでチーム合流となったが、4試合すべてで先発としての役割を果たした投球内容の良さを評価し、今永をセイバーメトリクス目線で選ぶ5月の月間MVP投手部門に推挙する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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