なぜ「ノーサイン」で強いのか 2年連続全国V、常勝軍団になった少年野球チーム

練習を行う多賀少年野球クラブ【写真:間淳】
練習を行う多賀少年野球クラブ【写真:間淳】

多賀少年野球クラブの辻監督「全ての選手の脳を辻正人にするのがベスト」

 2018、2019年に2年連続で日本一に輝いた滋賀・多賀町の小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」では、選手は辻正人監督のサインなしでプレーする。強さの秘密を探る連載第2回は、辻監督がチーム方針に掲げる「ノーサイン=脳サイン」をテーマにする。「全ての選手の脳を辻正人にするのがベスト」と考えてたどり着いた戦略だった。

 多賀少年野球クラブは今年も全国大会出場を決めた。毎年選手が入れ替わっているにもかかわらず安定した成績を残していることに加えて、少年野球界を驚かせているのは「ノーサイン野球」。辻監督は基本的に選手にサインを出さない。

「ノーサインにしたのは2012年からです。それまでは、練習で子どもたちの技術を上げて、試合は監督に任せてもらう形でした。戦術や考え方を教えるのは時間もエネルギーも必要なので、けん制も配球も全てサインにした方が効率的だと考えていました」

 野球の戦術やサインの意図を小学生が理解するのは簡単ではない。辻監督が方針を切り替えたのには理由があった。

「2012年の全国大会は子どもたちとの意思疎通がない采配で3位となり、世界大会に出場しました。優勝、準優勝のチームが辞退して回ってきた棚ぼたの出場でもあり、あまり気分良く世界大会に臨めませんでした。一方で、子どもたちは世界の舞台を存分に楽しんでいました。その姿を見た時に、子どもたちが自分と同じことを考えながら野球をしたら、もっと楽しいのではないかと感じました。へらへら笑う楽しさではなく、将棋のように先を読む楽しさです。私が考える戦術や戦略を教えて、全選手の脳を辻正人にしようと決めました」

座学で選手に戦術を伝授「子どもたちを『教えたがり』にするのが大切」

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