新庄剛志監督が企てた「形勢逆転」 2日連続で大活躍の打者に送った“刺客”

日本ハム・鈴木健矢【写真:荒川祐史】
日本ハム・鈴木健矢【写真:荒川祐史】

“個性派”の鈴木を大活躍の中村奨にぶつけ、狙った形勢逆転

 鈴木は期待通りの働きを見せた。カウント1-1からの3球目、114キロのスライダーを捉えられたものの、三塁手の石井が強烈なライナーをキャッチして1死。さらに続く山口の打席では、いきなり一走の高部をけん制で誘い出しアウトにした。さらに山口も、独特の投球モーションとボールの軌道にタイミングが合わず3球三振。試合の流れを変える“ゲームチェンジャー”としての役割を果たした。8回、9回と打線も走者を出し、もう一押しできれば……という流れを生み出した。

 社会人野球のJX-ENEOSから入団し3年目を迎える鈴木は、昨季までは横手からの150キロに迫る剛球が武器だった。ただ今春のキャンプ中盤、新庄剛志監督に「ボールが見やすくなっているから、ちょっと見づらくしない?」とアンダースローへの転向をすすめられた。

「プロで『最速150キロ』って言ってみたい」という野望があったが、長いプロ生活を送るために封印した。下から投げるようになってからの最速は130キロそこそこ。その分打者をしっかり見て、感じた狙いを外しながら投げるようになった。2軍では開幕から16試合に投げて防御率0.53と敵なし。交流戦中に昇格の一報を受け、この日が5試合目の登板だ。

 11日の中日戦で登板した際には、アンダースローと以前のサイドスローを使い分けるという器用なところを見せた。この“二刀流”もまた、新庄監督の提案だという。唯一無二の投手として、日本ハムのブルペンで居場所を作っていこうとしている。

 先発に上沢、伊藤という2本柱を立てての連敗はもちろん痛い。5位オリックスとの差は4.5ゲームに開いた。伊藤は「なんかしっかり攻略されたなとは序盤から感じていたので、そういう時にどうするかをもっと考えないといけない」と話した。これは伊藤個人だけでなく、チームの課題。勝ちを重ねるには、時に劣勢を跳ね返すための引き出しが必要になる。鈴木が他の投手にはない個性を磨いていけば、そこで決定的な働きをする日がきっと来る。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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