100校超の誘いがあっても「早実一本」　“無謀な目標”叶えた元エースの進路の選び方

早実でプレーするイメージ膨らませて勉強　成績はほぼオール5

　早実のユニホームを着てマウンドに立つイメージを膨らませて机に向かうと、目標に近づいている感覚が湧いた。野球の練習も同じだった。内田さんは「日本で3本の指に入るくらい練習していたかもしれません。周りも同じくらい練習していると思っていました」と振り返る。勉強も野球も、明確な目標に向かって努力を続けた。

　中学の1年間で野球の面で成長を実感し、2年生になった頃には早実が憧れから目標に変わっていた。「自分には予習が合っていた」と学校の成績も技能教科1つを除いて全て「5」。両親やシニアの監督には「早実を目指す」と伝えた。

　内田さんは順調に成長し、中学3年の夏にはシニアの日本代表に選ばれた。多数の高校から注目され、声をかけられた100校を超える高校の中には大阪桐蔭もあった。それでも、「早実1本」の進路はぶれなかった。そして、努力が実り、推薦入試で合格を手にした。周りからは“無謀”と思われていた目標を達成し「性格的に困難な道を選びたかったのかもしれません。担任の先生は卒業式の時に謝ってきました」と笑顔で回想する。

　野球アカデミーを運営して、今は小・中学生の保護者から進路の相談を受ける。内田さんは野球の指導者であって、進路指導は専門ではない。それぞれのチームや学校の特徴を正確には把握していないが、1つだけ送っているアドバイスがある。

「何を目指す、どこを目指すのかを考えて進路を選んでほしいと思っています。シニアやボーイズ、高校に行くのが目的になっている子どもや保護者が多い気がします。例えば早実は、大学でも野球をやりたい人や野球以外も頑張りたい人には向いていると思います。でも、高卒でプロを目指す人にはベストな道ではないかもしれません。中学で進路を考える時は、高校に入ってから、さらには高校卒業まで目を向けてほしいです」

　内田さんは目指していたNPBには進めなかった。だが、「早実に行って心から良かったと思っています」と力を込める。卒業してからも友人との親交は続き、仕事の相談をしたり、別の分野で活躍する姿に刺激をもらったりしているという。高校3年間がピーク、高校で終わる友人関係にならないよう、内田さんは先を見据えた進路選びを勧めている。

（間淳 / Jun Aida）