なぜ怒声罵声がなくならない? スポ根卒業で2度の全国制覇…少年野球監督が分析

多賀少年野球クラブの辻正人監督(中央)と選手【写真:間淳】
多賀少年野球クラブの辻正人監督(中央)と選手【写真:間淳】

多賀少年野球クラブの指導方針は楽しさと強さの両立「勝利理想主義」

 野球人口の減少に歯止めがかからない。子どもたちや保護者が野球を敬遠する理由の1つに挙げるのが、指導者や一部の保護者による怒声罵声だ。楽しさと強さの両立「勝利理想主義」を掲げる小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督の連載第6回のテーマは「怒声罵声がなくならない理由」。辻監督は“脱スポ根”にチーム方針を転換してから、メンバーが劇的に増えたと話す。

 滋賀・多賀町にある「多賀少年野球クラブ」は2018、2019年に全国制覇を果たしている。辻監督が掲げるチーム方針は「世界一楽しく!世界一強く!」。選手の考える力を育て、自主的に練習する工夫を凝らしている。いまだに怒声罵声で選手を育てようとする一部の指導者に、辻監督は苦言を呈す。

「大きな声で選手を叱って選手が上手くなるなら、私もやります。そうではないなら、エネルギーの無駄です。伝え方や練習内容を考えて指導すべきです。私たちのチームの指導者が声を張り上げるのは、子どもたちに気分良く野球をやってもらいたい時です。社会人になって、先輩や上司から大きな声で叱られたら、仕事がはかどりますか? はかどらない、逆効果と思うのであれば、子どもに対して大きい声を出すのはやめた方が良いと思います。時々、叱ると怒るは違うと言う人がいますが、受け取る側にとっては同じです」

 ここ10年ほどで、野球人口は大幅に減っている。暴言を吐いたり、怒鳴ったりする野球へのマイナスイメージが、競技人口減少の一因になっているとの指摘もある。指導者に対する社会の目が厳しくなっているにもかかわらず、なぜ暴言や怒声罵声はなくならないのだろうか。

「指導者に成功体験があるからだと思います。数パーセント、100人に1人か2人くらいの割合かもしれませんが、怒声罵声によって成長した子どもがいる可能性があります。わずか数パーセントの成功が忘れられない。全て失敗であれば、指導者を辞めるか、指導方法を変えるはずです。もしくは、自分が怒声罵声の環境で育って、社会人として立派になった成功例と考えているかだと思います」

スパルタのような指導を2017年に全面的禁止→18、19年に全国制覇

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