打者・根尾昂は失敗だったのか? “一人歩きした”期待値と周囲の等身大の評価

投手転向前の中日・根尾昂【写真:荒川祐史】
投手転向前の中日・根尾昂【写真:荒川祐史】

打者としては“時間をかける価値がある”未完の大器だった可能性

 期待と実情の乖離はなぜ生まれたのか。誰もが疑わない圧倒的なポテンシャルの中に潜む不器用さに、その一端を垣間見ることができる。

「手だけだったら操れるけど、物を持ったら上手くないという感じかな」。オフの自主トレに同行させ、間近でアドバイスを送ってきたベテランの大島洋平外野手は、そう根尾を評す。ピンポイントの助言を頭で理解できれば完璧なイメージが描けるが、いざバットを持つと上手く応用できない。体の動きに落とし込む作業に苦労してきた。

 それでも大島が面倒を見ていたのは、その先の覚醒を確信していたからこそ。まだまだ時間のかかる未熟な背番号7は、裏返せば時間をかける価値が余りある未完の大器だったのではないか。打者で落第点となったから投手に転向したのではなく、“覚醒まで要する時間”を考え、より新たな可能性に賭けたとの見方もできる。潜在能力と不器用さの天秤がいち早く前者に傾くのは、マウンドの上かもしれない。

○著者プロフィール
小西亮(こにし・りょう)
1984年、福岡県生まれ。法大から中日新聞社に入社。石川県や三重県で司法、行政取材に携わり、中日スポーツでは主に中日ドラゴンズやアマチュア野球を担当。その後、「LINE NEWS」で編集者を務め、独自記事も制作。2020年からFull-Countに所属。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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