“投げなさすぎ”も「怪我をする恐れ」 慶大監督が注意を促す高校までの過ごし方

怪我につながるバランスの悪い調整 平日投げずに土日の試合で連投する選手も

 過去に肩や肘を故障した選手はスローイングする際に、正しい位置で腕が振れず、体を逃がしてしまう傾向があるという。堀井監督が社会人チームを指揮していた時も同様の選手を目にし「能力が高くても成長が止まってしまうので、小、中、高校で故障につながる練習や起用はしないでほしいと思っています。特に中学の硬式は、酷使すると成長期の体にかなりの負担がかかります」と警鐘を鳴らす。野球はチームスポーツである以上、指導者が考えるのは個人の成長だけではないと理解した上で「投げ過ぎは一番駄目です」と強調する。

 小、中学での投げ過ぎは、高校や大学で別の問題につながる場合もある。故障した経験から平日の球数を極端に減らして、土日の試合で連投する投手がいる。毎週のように試合で登板することを考えて、全体の球数を抑えるために平日の投球数で調整するのだ。堀井監督は、この調整法のリスクを指摘する。

「試合で投げるためには、対応できる体を平日の練習でつくる必要があります。投げることで、怪我をしない体がつくられていきます。平日にほとんど投げていないのに、土日に全力で投球したら怪我をする恐れがあります」

 中学や高校では選手自ら球数を管理するのは難しい。それぞれの選手の体格やコンディションから、指導者が平日の練習と土日の試合で投げる球数を調整する必要がある。連投する体ができていない投手を土日どちらもマウンドに立たせる起用法は、選手が怪我をするリスクを考えれば当然避けるべき選択となる。

 慶大では理学療法士が常駐し、定期的なメディカルチェックも行っている。監督やコーチのような野球を指導する専門家だけでは判断できない部分が出てくると考えているためだ。堀井監督は「選手は投げ過ぎれば怪我をしますし、普段あまりにも投げないと関節や筋肉が緩んで故障するリスクがあります。大学野球のような規模ではなくても、小、中学生のチームも医療機関を上手く活用してほしいと思っています」と子どもたちを守る提言をしている。

(間淳 / Jun Aida)

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