「惹きつけられなければ終わる」“初代女子野球日本代表”が提言する競技発展の鍵
初代女子野球日本代表の森井和美さんは92年、オリックスの入団テストを受けた
昨年8月23日に史上初めて聖地・甲子園で行われた「全国高校女子硬式野球選手権大会」決勝戦。バックネット裏には女子野球の歴史を刻んできた先駆者たちがつめかけ、神戸弘陵と高知中央の一戦を見守っていた。
「スター」の異名を持つ女子軟式野球チーム「モンスターズ」の森井和美さんは「仕事で行けなかったんですよ」と悔しがる。初代女子野球日本代表の一員として北米やオーストラリアなど女子野球の盛んな国で経験した世界大会と重ね合わせ、「高校生たちは嬉しかったでしょうね。私も代表としてお客さんがいっぱいの中で野球ができたときは嬉しい気持ちがありました」と出場した選手たちの胸中を察した。
1992年、森井さんを含む3人の女子選手がオリックスの入団テストを受けて話題になった。それから30年。女子選手を取り巻く環境は大きく変化してきた。「残念な結果(無期限休止)になったけど、女子プロ野球もできた」とこれまでの歩みに触れ「甲子園でもできるようになって、もう私たちの頃とは時代が違いますよ」と驚く。自身が若かった頃には想像もしていなかったほどに女子野球が発展しているということだろう。
現在55歳の森井さんは幼少期から「女の子らしいことが苦手」で、近所の男友達とよく集まって野球をしていたという。「私たちの時代って何をするにもみんな野球だったんですよ。もう楽しくて、楽しくて。野球ができるとなるとすごい嬉しくて。私にとって一番楽しい時間だったんです」と当時を懐かしむ。啓明女学院(現:啓明学院中学・高等学校)では「なにか野球に繋がるものがあれば」とソフトボール部へ入部。週末は女子軟式野球チーム「神戸レディース」で白球を追った。