名門復活まで「とにかく、苦しかった」 涙の横浜高監督が71通の手紙に込めた思い
東海大相模との決勝戦をサヨナラ勝利で制し甲子園へ
ライバル対決を制したのは、横浜だった。0-0で迎えた9回2死二塁、萩宗久外野手(2年)が外のスライダーを右前に運ぶと、二塁ランナーの岸本一心外野手(3年)が生還。この瞬間、2年連続20度目の夏の甲子園出場が決まった。横浜スタジアムで行われた第104回全国高校野球選手権神奈川大会決勝戦、東海大相模を相手に1-0、サヨナラ勝利を収めた。
就任3年目を迎えた横浜・村田浩明監督は、ベンチ前で顔を覆い、片膝をついて泣いていた。立ち上がるまでにおよそ20秒。涙が止まらなかった。
「とにかく、苦しかった。それが一番です。秋はコロナで出場辞退、春は部内でごたごたがあり、世間を騒がせてしまった。そんな中、キャプテンの玉城(陽希)を中心に一致団結して、本当によく戦ってくれました。今日の杉山(遥希)の好投も、玉城のリードがあってのもの。東海大相模戦に向けての準備を念入りにやったうえで、玉城が冷静に配球をしてくれました」
杉山と玉城のバッテリーは、これまでほとんど見せていなかった左バッターのインコースのストレートを要所で配した。左腕は9回2安打完封と最高のピッチングを見せた。
東海大相模のエース庄司裕太投手(3年)に対しては、「左バッターが打つのは難しい。カギを握るのは右バッター」という考えのもと、これまでは6番・山崎隆之介内野手(左打者=3年)、7番・萩(右打者)で組んでいた打線を入れ替えたことが、最後に生きた。
指揮官が準備したのは、戦い方だけではない。決勝前の高揚感から、4時に目が覚め、パソコンの前に向かった。
「部員71名全員に手紙を渡しました。一番伝えたかったのは、『3年生のためにやろう』。この3年生が、横浜高校の野球部をつないでくれたので。泥臭く、がむしゃらに頑張ってくれて、本当に『こいつらを勝たせてあげたい』と思わせてくれるチームに成長しました」