エース番号は1つでも「2人に充実の日々を…」 二松学舎大付監督の“複雑な親心”
市原監督「本当は両方に充実した日々を過ごしてほしい」
その後、辻はグングン調子を上げ、ついに今大会を前に背番号1を手にした。市原監督は「辻よりも、布施に『次は取り返せ』と声をかける方が先でした」と振り返る。「もともと入学当初から、辻と布施のどちらがエースになるのかと思いながら見ていました。2人で競い合いながらやってきた。昨秋から今春にかけては布施が、その後は辻が充実した時間を過ごした。本当は両方に充実した日々を過ごしてほしいのですが……」と複雑な親心をのぞかせる。
「辻は昨年、中途半端な状態で投げ始めなかったことが良かった。布施の勢いにつられて無理をしていたら、また怪我をしていたかもしれない。いい意味で頑固なところがある子で、ちゃんと治るまで我慢していました」とも、市原監督は語る。
「1番を背負えるとは、怪我をしていた時には思っていませんでした」と感慨深げに話す辻は、今大会で準々決勝、準決勝、決勝に先発し、役割を果たした。一方、今大会では「11」を背負った布施は、8回コールド勝ちした5回戦・錦城学園戦に完投したのを最後に、登板機会がなかった。
辻は「今日はスタミナが足りず、疲れが出てしまった。甲子園では9回を投げ切れるように、気持ちの面を含めて自分を変えていきたい」と思いを新たにしている。一方の布施も、甲子園のマウンドに立つべく、これから最後の追い込みをかけるはず。その2人を見守る市原監督も二松学舎大付OBで、高校3年の春、チームを甲子園に導き選抜準優勝を成し遂げた左腕エースだった。「辻と布施には、残り少ない時間も2人で頑張ってほしい」と温かい眼差しを投げかける。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)