「自分と同じ思いをさせたくない」 少年野球の監督がこだわる球数管理と複数ポジション

複数ポジション、全選手に出場機会…自身の息子の経験も指導方針に影響

 チーム練習は日曜日のみで3~4時間と限られており、ブルペン投球は各選手15球ほどに抑える。実戦形式のメニューで打者相手に投球する機会を増やし、少ない球数でより多くを得る狙いで練習している。石川監督は「投手と捕手は特定の選手に起用が偏ると、怪我をするリスクが高くなります。中学生になるとポジションが固定されやすいので、小学生のうちに投手をやってみたい選手には経験させたいと思っています」と語る。

 子どもたちの怪我を防ぐ指導、多くの選手に複数のポジションを経験させて試合に出る機会をつくる方針は、子育ての経験からも生まれている。石川監督には3人の息子がおり、全員が少年野球チームに入っていた。

 ある日、息子の1人が不満を爆発させた出来事があった。チームが大会で好成績を残し、受け取ったメダルを手に帰宅した。すると、「こんなメダルはいらない。試合に出ていないんだから」とメダルを投げつけた。試合に勝つために選手が固定されたため、出場機会がなかったことに悔しさと怒りを抑えきれなかったのだ。

 父親として少年野球の現場を見る中で、疑問を抱くことも少なくなかった。例えば、息子のチームメートは送りバントを失敗すると指導者に怒鳴られるだけで、何を改善すべきかを伝えられなかった。投手をやっていた子どもが肘に大きな負担がかかる投げ方をしていても、指導者には修正されず酷使され、結果的に軟骨剥離で半年間投球できなくなる事態も目にした。楽しくて始めたはずの野球で苦しんでいる子どもたちを見ていられなかった。

 石川監督の指導の根本にあるのは、野球の楽しさを伝えること。「野球を好きなまま、チームを卒業させたいと思っています」。怪我で野球を諦めたり、偏った選手起用で野球を嫌いになったりする子どもは見たくない。

(間淳 / Jun Aida)

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