45年前から“ノーサイン&ノーバント” 少年野球チームが注ぐ「1本の安打」への情熱

石川監督が信じる1本の安打の力、小学2年で経験した忘れられない感触と喜び

 石川監督がノーサイン、ノーバントを掲げる理由は、自身の経験からもきている。野球を始めた小学2年生の時、初めて公式戦に出場した。本来は3年生以上を対象にした試合だったが、人数が足りず、スタメンで起用された。初めての打席。相手の4年生エースから、エンタイトルツーベースを放ったという。

「チームメートに『回れ、回れ』と言われて必死に走りました。セカンドベースに到達したら、うれしさから膝が抜けて立っていられなくなりました。まぐれでしたが、今でも鮮明に覚えています」

 小学2年生で初めて記録した安打。その感触と喜びが、先のステージでも野球を続ける原点となった。ノーサイン、ノーバントの方針は、子どもたちに野球の楽しさを知るチャンスを少しでも増やしたい思いが込められている。

「子どもたちは1本の安打、1つのプレーで野球への取り組み方が変わりますし、楽しければ自主的に練習するようになります。実際、チームには試合で好投手から長打を放って、プレーが変わった選手もいます。自信をつける1本、楽しさを知る1本を小学生のうちに経験させたいんです」

 全ての選手が実戦を経験できるように、練習試合では選手を入れ替えたり、一度退いた選手を再出場させたりしている。公式戦でもメンバーを固定せず、できるだけ多くの選手を起用する。「少年野球は練習試合がメインでもいいのではないかと感じています。選手は試合に出ないと野球の楽しさを感じられないと思います」と石川監督。子どもたちが笑顔になる1本の安打をサポートする指導にこだわっている。

(間淳 / Jun Aida)

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