140キロ超え14人、メンバー外が満塁弾…甲子園V導いた仙台育英の“平等評価方式”

東北勢として初の優勝を果たした仙台育英ナイン【写真:共同通信社】
東北勢として初の優勝を果たした仙台育英ナイン【写真:共同通信社】

須江航監督が信頼する和田照茂トレーナー、猿橋善宏部長の存在

 今夏の甲子園で東北勢初の頂点を掴み取った仙台育英・須江航監督。全部員を平等に評価するシステム、複数投手の育成に力を注ぎ、チーム全体の底上げをはかったことが、日本一につながった。このチーム作りを実践できたのは、信頼できるトレーナーや部長の存在があったからである。

 下関国際との決勝戦の7回に、満塁弾を放つなど、計10打点の活躍を見せたのが、背番号14の岩崎生弥だった。昨年6月から、合併症の影響で練習を休むこともあったが、今年6月に万全の体調に。県大会ではメンバー外も、甲子園でメンバー入りを果たし、一躍ヒーローになった。

 須江監督がチームを作るうえで、大事にしてきた考えがある。

「日本一激しいチーム内競争。その先に、日本一がある」

 今年5月、県大会の翌日にグラウンドを訪れると、紅白戦の最中だった。県大会で出番が少なかった選手とメンバー外の選手を中心に、朝から夕方まで試合が組まれていた。

 この考えに至ったのは、自身の高校時代が影響している。練習試合に出た記憶はなく、練習ばかりの日々。高校2年の新チームから、グラウンドマネジャーに就いた。「選手たちに、野球を存分にやらせてあげたい」という気持ちが根底にある。

 打者であれば「OPS」、投手であれば、「ストライク率」「奪空振り率」「一塁からの被進塁率」などを重視し、そのうえでポジション特性を考慮しながらメンバーを決める。いつも手元に置いてあるタブレット端末には、膨大な量のデータが保存されている。

 これらの評価基準をあらかじめ提示し、さらにどのポジションでどんな選手が必要か、“求人広告”という形で打ち出す。指導者として心掛けるのは「後出しジャンケンをしない」だ。後出しをすれば、選手が迷い、信頼関係が崩れることにもつながりかねない。

 データを取ることに関して、須江監督はこんな話をしている。

「監督として、自分には選手を評価する目がありません。そこは自覚しています。だからこそ、数字が必要。数字が絶対ではありませんが、ひとつの判断基準になります」

 この夏の大会中にも、紅白戦が行われ、そこで結果を残したのが岩崎だった。

絶対的な信頼を寄せる存在、猿橋善宏部長とは?

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY