140キロ超え14人、メンバー外が満塁弾…甲子園V導いた仙台育英の“平等評価方式”

絶対的な信頼を寄せる存在、猿橋善宏部長とは?

「メンバー外も入れると、140キロを超えるピッチャーが14人!」と話題になった投手陣は、日々のトレーニングを重要視する。秀光中時代から須江監督をサポートする和田照茂トレーナーが、個々のピッチャーに合ったプログラムを提案し、自分の強みを伸ばすとともに、弱みを改善していく。

「各選手の柔軟性、筋力、巧緻性を見たうえで、必要なトレーニングを見極めて、提案しています。土台となる体ができていない状態で投げ込みをすれば、故障につながるだけです」

 故障を防ぐために、キャッチボール、遠投、ブルペンでの球数はすべてチェックシートに記入する徹底ぶりだ。

 和田トレーナーは、8月4日から決勝の翌日までチームに帯同し、選手をサポートした。筋出力が落ちないように、試合と試合の間にウエートトレーニングを取り入れるなど、コンディションの維持に力を注いだ。

 トレーナーから見た、須江監督とはどんな指導者か。

「正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると、客観的に分析できる指導者です。そして、目的達成のために、正しいものを追求する力が強い。だからこそ、日本一を獲ることができたと思います」

 日本一を成し遂げたとき、涙を流す須江監督を優しく抱きかかえたのが猿橋善宏部長だった。

 昨年度まで宮城県内の公立中を率いて、松島中としらかし台中で4度の全国大会出場。「主体性」と「知性」を育む指導に特徴があり、指導者講習会の講師を毎年のように務めていた。60歳の定年を迎えたところで、須江監督から熱烈なオファーを受けて、仙台育英の部長に就いた。

「『宮城や東北の子たちが劣っているわけがない。絶対に優勝しよう』『高校野球で活躍できる子を育てよう』と、中学野球でともに戦ってきました。僕が高校の監督になったとき、いつかは、猿橋先生のお力を借りたいと思っていました。猿橋先生は語彙力が豊富で、数多くの経験も持っています。ぼくが伝えたいことを通訳して、上手くつないでくれる。選手の気持ちにも耳を傾けてくれて、チームの中のさまざまなバランスを取ってくれています」

甲子園優勝、熱い涙の抱擁があった背景

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