10年ぶり自己最多16勝…ダルビッシュが抱く自負 「99%の投手」と異なる“知の構え”
独自のデータから作成した「傾向と対策」を生かした6回の1球
白星に付加価値をつけたのが「打者天国」と称される高地デンバーでの粘投だった。
クアーズ・フィールドでは過去4度先発し白星無しの1敗、防御率は5.95と苦戦してきた。この日も不穏な空気が漂った。初回の立ち上がりに、1番のマクマーンに甘く入るチェンジアップを打たれ、右翼越えの先頭打者本塁打を浴び、連続無失点は16イニングでストップ。しかし、喫した1発が危なげない投球へ道筋を付ける――。
被弾したチェンジアップの感触から、落ちないと直感したスプリットを封印。数球投じたツーシームも本来の軌道は描けず、直球とスピン系のカッター、そしてスライダーを中心に組み立てていくが、収集した独自のデータから作成した「傾向と対策」を十分に生かしきった背景がある。
6回のマイケル・トグリアから奪ったハーフスイングでの空振り三振には、それがはっきりと映る。ボールカウント0-2と追い込んでから選択したのは内角にワンバウンドする82マイル(約132キロ)のカットボールだった。
ダルビッシュの声が少し弾んだ。
「最低限あそこでいいかなっていう感覚で。できればプレートの上に落としたい。でも、(ボールが)抜けて、ポンって(バットを)合わされると逆方向でも入っちゃうので。とにかくワンバウンドを意識しました」