10年ぶり自己最多16勝…ダルビッシュが抱く自負 「99%の投手」と異なる“知の構え”

「打者の傾向をしっかり分かっているというところは、絶対大きい」

 内寄りの球に手を出すトグリアの傾向をしっかりと把握し、それを誘う“意図的なワンバウンド”は、被弾のリスクヘッジも想定したものだった。ダルビッシュは言う、

「打者の傾向をしっかり分かっているというところは、絶対大きいと思いますね。大体99%の人(投手)は、感覚であったりだとか、スカウティングレポートを見て投げているだけなので。それよりもっと深いところにいくことで、より安定に近づくのかなと思います」

 チームのデータ班がそろえる資料にも限界がある。こわばった言い方をすれば、ダルビッシュの1球への準備には、陪審で下される評決にも重なる過程――判断のための情報集、比較衡量、討議、そして意思決定――をたどる。ノラ捕手、そしてゲームプランを担当するサマービル・コーチとの意見交換も大切にする。言い切った「99%の投手」は、その徹底度の裏返しでもある。

 数試合前から、右肘を下げ気味にして投げる外角へ伸び上がるスライダーを配球に組み入れている。技術の探求心も知の構えも10年前とは趣を異にする。36歳になったダルビッシュ有には今、「進化」の2文字が当てはまる。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY