認めたくないイップス「腕の感覚がない」 ティモンディ高岸が“野球を消した”過去
自分を追い込むうちに症状は悪化「腕の感覚が感じられないように…」
1球でもボールが抜ければ、自分を責めた。「どんどん体が前に突っ込んで力む。それでもう、腕の感覚が感じられないようになりました。固まっちゃうというか、腕が出てこないという感じですね」。
悩みを人に打ち明けることもできなかった。「自分がプロに行きたい。みんなよりも勝らないとダメだ。そうなると周りに相談すべきじゃない。という考え方でしか野球をやっていなかったですね」。今でこそ、イップスは精神的な症状として理解が進んできたが、当時はまだ“技術不足”として受け取られる向きがあった。
「イップスだって人に言えない暗黙の空気感みたいなのもあって、自分も強がってイップスじゃないと思いこもうとしていました」
キャッチボールをしようにも、暴投してしまい相手に迷惑をかけてしまう。だんだん投げることが怖くなり、アップも十分でないまま無理に投球練習へ。イップスを治そうと100球、200球と投げ続けた。必然と身体には負担がかかり、3年時には肘を故障。野球を辞めるしかないと思った。
これまで野球一筋だった自分の人生から、野球を消そうとした。「完全に投げれなくなって、もうボロボロでした。地球が無くなったみたいな感覚。野球はやってなかったと思いこもうとしていました」。道具は後輩に譲り、野球中継も見られなくなった。