中日を戦力外となった「花火の人」 滝野要のプロ初安打が起こした“奇跡の光景”

初安打を放った2年前を振り返った【写真:小西亮】
初安打を放った2年前を振り返った【写真:小西亮】

2球で追い込まれた直後、視界の片隅に「ちょっとだけ見えたんです」

 序盤から劣勢の試合展開を見つつ、ベンチ裏で代打の準備をしながら出番を待っていた。2-7とリードされた6回、その時はやってきた。2死走者なしで、木下雄介投手の代打として左打席に立つ。ヤクルトの先発・小川泰弘投手を対峙し、「1軍での2打席目、来た球、ストライクを全部振ろうと楽な気持ちでいきました」。ただ、その年に10勝を挙げた百戦錬磨の右腕に、2球で簡単に追い込まれた。

 いったん打席を外し、ひと呼吸を置く。そして再びバットを構えたとき、夜空が明るく照らされているのが「ちょっとだけ見えたんです」。直後の3球目、外角高めにきた143キロをスイング。逆らわずにとらえた打球は、レフト前に落ちた。

 一塁ベースへと駆けていく最中、左翼スタンド付近後方の光景がはっきり目に飛び込んできた。音を立てて咲く無数の花火。「僕のために上げてくれてるんかなと」。初安打の祝砲かと一瞬錯覚したが、そんなことはない。一塁についたころには、試合前に見た張り紙を思い出していた。

“打ち上げ地点”は、球場とは目と鼻の先にある国立競技場。国民的アイドルグループ「嵐」が、無観客ライブの事前収録をしていた。大掛かりな演出が、神宮球場では“祝福”のように見えた奇跡のタイミング。当時、SNS上でも大きな話題を呼び、キー局の人気情報番組でも取り上げられた。

プロ通算8安打も「花火のおかげで存在を知ってくれている人もいる」

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