10年連続ドラフト指名を狙う四国IL徳島 選手全員がプロ志望…驚きの球団運営とは?

ドラフト指名候補として注目を集める徳島インディゴソックス・日隈モンテル【写真:球団提供】
ドラフト指名候補として注目を集める徳島インディゴソックス・日隈モンテル【写真:球団提供】

投手は「150キロを投げられないと話にならない前提でやっています」

 一方で育成と勝利のバランスには難しさもある。育成を最優先に考えると、チームの勝利は二の次でいいという考え方もできるが、「きれいごとではなく、本当に勝つことも大事なんです」という。「スカウトは、優勝したチームのエースとか4番とか、大事な場面で盗塁を決めた選手とか、そういうところを見ています。なので、勝つと評価は上がりやすい、または評価をつけやすい。ドラフト指名という点においても、勝つことも大事なんです」と力説する。

 他の独立球団は、勝つためにベテラン選手を補強することもあるが、徳島はあくまでもNPBを目指す選手だけの構成で勝つことにこだわる。「そこのバランスをどうとるかというのを、選手獲得のときから意識します。年齢層だったり、どういう役回りをやってもらいたいかとか。チームが勝つことと、ドラフト指名されることのバランスを意識してチーム作りをします」。2022年も年間優勝こそ逃したが、若い選手たち主体で後期シーズンを制した。

 最後は、NPB球団にどのようにしてドラフト指名してもらうかだ。様々なレベルの選手が集まる独立リーグで、NPBのスカウトが見ているのは、単純な数字だけではない。「例えば、僕が東大からすごく打っていたからと言われて、評価されにくかったのもそう。独立で打ちまくっても、ある一定の130キロ台の投手からしか本塁打を打っていないとなったら、評価されにくいでしょう」と、谷田氏は自身の苦い経験も踏まえて解説する。

 反対に、誰もが評価しやすいのは「球速」や「足の速さ」といった相手に関係ない能力だ。「総合的にすごい選手は、周りのレベルも高くないと評価されない。少年野球のチームで大人が打ちまくっていても、すごいかどうかわからないじゃないですか。でも足が速い選手は、少年野球でも50メートル5秒台で走ったら、速いじゃないですか。周りは関係ない」。徳島は昨季まで4年連続で違う選手が盗塁王に輝き、今季もチーム盗塁数122は2位の香川に32個の差をつけている。

「投手陣も、150キロを投げられないと話にならないという前提でやっています。140キロ台後半の選手が多いので“あともう少し”をどう上げるかにみんなで取り組んでいます。仲間と高め合いもしますが、自分だけ抜けてやろうという気持ちもみんなあると思いますよ。その中で情報交換したり、刺激しあいながらやっている感じはあります」

 今年も「久留米のギータ」の異名を持つ井上絢登外野手や、一塁到達3.67秒の日隈モンテル内野手、最速153キロ右腕の野木海翔投手や圧倒的な落差のフォークを操る中山晶量投手らドラフト候補が目白押しだ。この中から、10年連続となるドラフト指名は出るのか。徳島インディゴソックスの挑戦に注目だ。

(工藤慶大 / Keita Kudo)

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