無念の2年連続指名漏れ…九大初のNPB選手目指した左腕、実らなかった“覚悟”

九州アジアリーグでは最多勝など投手3冠に輝きMVPにも選出

 ヤマエ久野九州アジアリーグでは、最優秀防御率、最多勝利、最多奪三振の投手3冠に輝く成績を収め、シーズン最優秀選手(MVP)にも選出された。日本独立リーググランドチャンピオンシップでは決勝で先発を任され、6回1死まで無安打投球。快挙こそ逃したものの、8回2安打無失点の好投で勝利投手となり、チームを日本一に導いた。今季の芦谷はこれ以上ないほどのアピールを続けてきた。

 元ソフトバンクの馬原孝浩監督には厳しいことも数多く言われてきた。NPBのレベルを熟知する指揮官だけに、目の前の試合で「抑えるのは当たり前でしょ。簡単にヒットを打たれるな。基本、3球三振で終わらせなさい」と圧倒的結果を残すことを課されてきた。その通りの結果を、リーグでは残した。

 とにかく真っすぐな男だ。九大卒ということもあるのか、見つかった課題を潰していくのが得意だった。ただ、野球強豪校でプレーしてきたわけではなく、自身では気付けないような課題も見つかった。火の国入団後は、馬原監督ら首脳陣に数多くの教えを受け「僕には見えていないような課題も見つけてくれて、方向性も出してくれて楽になった。何にどれくらい時間を費やせばいいのか、情熱をかけたり時間を使うのは得意なんですけど、どこに使うのかを指導して頂いたのは1番効率的に伸びた要因だと思います」と振り返る。

 九大4年だった昨年もドラフト会議で指名漏れを経験した。そして、独立リーグの世界に飛び込み「1年勝負」と覚悟を決めて挑んだ今季、再びその舞台に手は届かなかった。濃密な1年を過ごし、手応えも感じ、結果も残したが、またしてもNPBという高い壁に阻まれた。

「1年勝負」は言い換えれば「ダメだったら野球を辞める」という覚悟でもあった。「シーズンを通して毎試合毎試合反省も出ますし、まだまだ自分は伸びるんだなと毎試合毎試合感じていました」とこの1年を振り返る。まだ成長できる伸びしろは感じつつ「1人の人間として、独立で1年と決めていたので、親とも相談して、冷静に考えたいと思います」と言葉をつむいだ。今後はまだ未定。真っ直ぐな芦谷だからこそ、夢を叶えてもらいたいと思わずにはいられない。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)

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