野村克也を手玉に取ったV9戦士 「投げる球が全部わかる」猛打の裏にあった観察眼
相手の主戦投手から7打数7安打…見破った“癖”
渡辺が振りかぶった際、グラブに隠れるはずの右手のひらが少し見えると直球で、全く見えないとパームボールかカーブ。「だからそこだけを見て、難しい変化球なら打つのをやめればいい。甘い真っ直ぐの方が打ちやすいですから」。癖の発見はチーム全体として行っていたわけではなかったという。
盗塁が売り物の柴田氏には習慣があった。「ベンチにいる時にピッチャーのモーションや牽制の癖はずっと見ていた。捕手とのサイン交換で2度首を振ったらホームに投げるとか、走者二塁で2度(二塁方向に)向いたらホームに投げるとか。なくて七癖ですよ」。
プレーを録画したり、スコアラーが分析した情報を選手に伝達したりすることなどは各球団がほぼ実施していない時代。柴田氏は「自分でやっていて、随分助かりました」と述懐する。
南海の捕手が、後に指揮官として“シンキング・ベースボール”や“ID野球”などの緻密な戦術を広めた野村克也だったことも興味深い。
日本球界での両打ちの草分け的な存在は、癖を読むなどの能力にもたけていた。スピードスターで鳴らした柴田氏は、この当時からすでに現代野球の先駆者として突っ走っていた。
(Full-Count編集部)