監督やコーチに「ハイしか言えない」 異色の指導者が反面教師にする“昔のやり方”

小、中学生の頃に指導者に質問 反抗と誤解された苦い経験

 長坂さんは自身が小、中学生の頃を「基本的に指導者に対して『ハイ』しか言えない環境でした」と振り返る。監督やコーチは絶対的な存在。疑問や質問を口にする余地はなかったという。そんななかで練習メニューの意図を質問すると、返ってきた言葉は「いいからやれ」だった。

「指導者に反抗しているわけではなく、なぜ今、必要な練習なのか。どんな効果が期待できる練習なのかを知りたいだけでした。明確に意図を知って練習するかどうかで結果は変わってきます」

 高校、大学と進んでも、長坂さんの心はモヤモヤしたままだった。「自分の考え方が間違っているのだろうか」。霧が晴れたのは大学卒業後、米国の独立リーグでプレーしていた時だった。米国の子どもたちは練習メニューを説明する監督やコーチに「Why?」と投げかける。そして、指導者たちは「Because」で答える。

 子どもたちは指導者に質問し、指導者は練習の意図や効果を説明する。納得できない子どもには別のメニューを提案することもあった。長坂さんは「子どもと指導者がディスカッションして練習に入っていきます。これが本来の形だと感じました」と語る。自身が指導者になった時、指導の軸はすぐに決まった。

「子どもたちの質問に答えられる指導者にならなければいけないと強く思いました。自分自身が勉強して、もしその場で答えられなければ、調べてから回答するようにしています」

 野球塾に通う子どもたちは疑問があれば、長坂さんに遠慮なく尋ねる。ただ、指導は週に1回で、ほとんどの子どもがチームに所属している。そのチームでは、子どもたちの質問に耳を傾ける指導者ばかりではないという。

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