中日首脳陣の激怒覚悟「捨て身でやった」 戦力外の2か月前…爪痕残した“カニダンス”
相性「カニ」…長い手足に加え「自分は横の動きが早い」
手足が長いすらりとした体型に加え「自分は横の動きが早いらしく、みんなから『カニ』って呼ばれていました」。そこに合わせてきたかのような「可児デー」。球界を席巻する魔性ダンスをオマージュし、即興踊りを瞬時に思いついた。8月5日に今季初めて1軍に昇格したばかりだった滝野氏。黒星が続くチームの重い雰囲気を少しでも変えられればと、先輩選手に「面白おかしくやっても大丈夫ですか?」と事前に温度感を確認。「ここしかないなと思った」と役目を全うした。
もちろん、賛否あるのは承知の上。「楽しく盛り上げる」と「ふざける」は紙一重で、受け取る人によっても見え方は違う。首脳陣の目も気になったが「怒られる覚悟でやりました。もしあとで怒られたとしても、次やらなきゃいい」。崖っぷちにいる自らの立場を考えても、守るものはなかった。
26歳を迎えた2022年シーズン。1軍定着までの道のりは遠く、今季限りでの戦力外を覚悟し始めた時期でもあった。「もう8月だったんで、ある意味、捨て身でした。とにかく後悔なく、やり切ろうと思っていました」。予感は的中し、シーズン終了後に中日のユニホームを脱がされた。
4年間で通算59 試合、打率.174、0本塁打、0打点。グラウンドでは存在感を見せられなかったが、ベンチ前では誰よりも輝いた。「カニダンスはやって良かったなと今でも思っています」。プレー以外での“貢献”は、ファンの胸には確かに刻まれた。