「同じ取り組みをしていては…」 57試合登板のDeNA入江が休まず豪州Lに参戦するワケ
57登板の入江「やめておいた方がいいと言われるかもしれませんが…」
昨季最下位から今季2位に躍進したDeNAが、入江大生投手と宮國椋丞投手をオーストラリアリーグに派遣する。いずれも本人の強い意向によるものだ。プロ2年目の入江は今季、“リーグトップ2”の伊勢(71試合)、エスコバー(70試合)に次ぐチーム3位の57試合に登板した。本来ならまず、じっくり休養を取ろうと考えるのが普通だろう。一方、プロ12年目・30歳のベテランである宮國が参戦するのも異例。彼らはなぜ、あえてこの時期に海を渡るのか──。
2人はDeNAが戦略的パートナーシップを結ぶキャンベラ・キャバルリーの一員として、今月開幕するオーストラリアン・ベースボール(ABL)に参加する。12月末に帰国予定だ。
入江はリリーフに転向した今季、57試合で5勝1敗10ホールド、防御率3.00の大活躍を演じた。昨季はドラフト1位ルーキーとして大きな期待を受けながら、先発投手として4戦全敗、防御率7.85と散々。8月には右肘のクリーニング手術を受けて残りのシーズンを棒に振っていたが、配置転換が功を奏した格好だ。2日の契約更改では、今季年俸1600万円の2.8倍以上にあたる来季4500万円(2900万円増)を勝ち取った。
とはいえ苦い1年目を過ごしただけに、浮かれるところは無い。それどころか「肩と肘は消耗品と言われますし、(豪州リーグ参加は)一般的に見たら、やめておいた方がいいと言われるのかもしれませんが、それでも僕は、これまでと同じ取り組みをしていては来季活躍できないと思いました。何か新しいものをつかむキッカケにしたい」と危機感を露わにする。「来季の開幕へ向けて、できるだけ長く実戦感覚を持っておきたいという気持ちもあります。同じ球数でも、試合で投げるのとブルペンで投げるのとでは全然違いますから。特に変化球のレベルを上げていきたいと思っています」と強い口調で意図を明かした。
一方、宮國の思いはさらに切実だ。今季は中継ぎで17試合に登板し勝ち負けなし、防御率8.71に終わった。ビハインドでの状況、回またぎなど気の毒な登板も多く、100万円増の来季年俸940万円で契約を更改したが、毎年結果が出なければ現役続行の危機に瀕しかねない年齢である。「自分自身、結果に納得していない。チームに貢献するどころか、足を引っ張ったところがあった」と猛省。豪州リーグ派遣を「実戦を増やして感覚を向上させるチャンス」と捉えて手を挙げた。「今は特に真っすぐの質を上げることに取り組んでいます。オーストラリアでも実戦とトレーニングの両方を重ねていきたい」と話す。
今季十二分に働いた若手も、プロで10年超のキャリアを重ねたベテランも、シーズンオフに実戦を積み、来季へ向けて貪欲にヒントをつかもうとしている。こうした雰囲気がある以上、来季のDeNAには“今季より上”を期待してよさそうだ。(金額は推定)
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)