プロ野球選手の集中力、根性は他分野でも“有用” 第2の人生で考えるべき「進学」
元鷹・江尻慎太郎氏と「代ゼミ」副理事長が選手のセカンドキャリアについて対談
アスリートのセカンドキャリアについて、ソフトバンクの球団OBが企業経営者や各界のトップランナーらとセカンドキャリアについて考える新連載。日本ハム、DeNA、ソフトバンクでプレーし、現在は元選手のセカンドキャリア支援などを行うホークス子会社「Acrobats」で働き、自らも所属OBの1人として活動する江尻慎太郎氏と、学校法人高宮学園代々木ゼミナール副理事長、「SAPIX YOZEMI GROUP」共同代表で教育学博士でもある高宮敏郎氏が、教育の観点も踏まえて語り合った選手のセカンドキャリアの後編は、プロ野球選手に代表されるアスリートの優れた素養と、セカンドキャリアでの勉強という選択肢について。
江尻慎太郎氏(以下、江尻)「プロ野球選手は毎年150人前後が引退、戦力外になります。2021年の調査ですと、野球関係の仕事に就くのが75%ほど。野球以外の企業に就職、起業する選手が15%ほどで、進学するのはわずか2人しかいませんでした」
高宮敏郎氏(以下、高宮)「セカンドキャリアの選択肢の中に勉強や進学を選ぶ人がもっといてもいいかもしれないですね」
江尻「変に学歴コンプレックスを持つ必要はまったくないと思うんです」
高宮「野球の現場でもそういうことあるんですか?」
江尻「あるかと思います。少なからずプロでプレーして、お金もある程度あるので、受験してみるのもいいんじゃないかと私は思うんです。例えば、工藤公康さんとか仁志敏久さんのように、筑波大に行かれている方もいます。あれ程の方々が、さらに自分のバリューを上げようとされている姿には感銘を受けますね」
高宮「現役時代から考えるスタイルの方が、自分で考えてきたものを大学や大学院でもう一度、再整理して再構築するというイメージがありますね」
江尻「勉強なんてできないと、思ってほしくないと思いますが、実際、現役引退後に勉強して学力は身に付くものなのでしょうか」
高宮「人生のどのタイミングでも勉強をやっていなかった人が、20何歳から学ぶというのは、なかなかつらい部分はあるとは思います。どこかで基礎が作られていないと、ですね。例えば、小学校から中学校までにちゃんとやっていれば、そこは取り返しやすいはずです」
江尻「私も小学校、中学校はそれなりにやっていましたが、高校時代は野球に明け暮れ、正直勉強に時間を割くことはあまりできなかったように記憶しています。言い訳ですが……笑」
高宮「やはり小学校、中学校の知識がないと、勉強は積み上げなので。家の土台全くなしに、上に何かを作ってもそれはなかなか乗っからない。それと同じですね。いま、野球をやっているお子さんがいる保護者には特に申し上げたいんですけど、やっぱり“〇〇だけ”は非常に危険なので、そこは上手くやっていただきたいです。学校の授業を侮らないで、そこをしっかりやっておくだけでも、例えば、浪人したとしても、やっぱり“後伸び”しますので」