ドラ1で福留を外し「もう誰でもええわ」 結果的に“大当たり”だった27年前の指名

荒木にお願い…契約金は「『6000万円でいいです』と言ってくれ」

 さらに契約金問題でこんな裏話も。「当初、4位で契約金3000万円くらいを予定していたのが、1位。会社は『それにふさわしいお金は用意しますよ』って言ってきたけど……」。それでも他球団1位よりは安い金額だった。マスコミに示した推定金額は6000万円。同じ年に熊本工から松本輝投手がダイエーに2位指名されたが、こちらは8000万円ともいわれていた。そこで早川氏は荒木にこう提案した。

「報道陣に囲まれたとき『球団からはもうちょっとくれると言われましたが、僕はそんな選手じゃないから6000万円でいいですって言いました。入ってから頑張ります』と言ってくれ」と……。荒木はその通りにコメント。これが大成功だったという。

「今の世の中に、こんなきれいな考えを持っているやつがいるって、すごい褒められた。まぁ、それが狙いだったんだけどね」と早川氏は明かす。「いまだに荒木は言いますよ。あれはすごかったですね、自分が好感度を持たれたのは、あの作戦が、ってね」

 2017年に荒木は通算2000安打を達成したが、早川氏は「最初の5年間で15安打しか打ってなかった。普通ならクビですよ。だけど星野さんは使ってくれた。たぶん俺が獲ってきたからだと思う。そういう人なんです、あの人は……」。偉業の日、楽天副会長だった星野さんは涙を流しながら荒木に花束を渡した。今でもそのシーンが目に浮かぶという早川氏は、楽天スカウト時代の話もしはじめた。ケンカもやむなし。強引に進めたあのときのことを……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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