立浪監督は「へっぴり腰になっている」 “元お世話役”が抱く違和感「遠慮してる」

星野仙一氏の墓前に立つ早川実氏(一部加工)【写真:本人提供】
星野仙一氏の墓前に立つ早川実氏(一部加工)【写真:本人提供】

3か月に1回のペースで星野さんのお墓参り「まだ生きてますって伝えてます」

 ただし振り返れば、立浪はまだ厳しくやられていない方かもしれないという。「星野さんは3、4年くらいで自分が乗っていたベンツを立浪に渡していたからね。そのとき、山本昌は国産車。監督に『もうベンツに乗っていいですか』って聞いたら『10年早い』って言われたそうだ」と早川氏は苦笑する。

「昌はずっと耐えていたよ。立浪より先に入団していたのに……。早川さん、言ってくださいよ。またダメって言われましたよって」。山本昌といえば、スーパーカーなど高級外車のコレクションでも有名になったが、そんな苦難の時代もあったわけだ。

 早川氏は星野さんの監督付広報になったとき、真っ先に言われたことを思い出すという。「俺をなるほど、なるほどって納得させてみろ。これはこうですよね、もうこうですよね。なるほどなって」。以来、何度もそれに挑戦した。「あとふたつ、うなずかせれば俺の勝ちだなって思うときもあったんだけど、星野さんはそういうときにこう言うんです。『おまえ、誰にものを言ってるんだ、俺は監督だぞ!』って。汚い刀を使うみたいなものですよ」。

 そう言われたら「すみません」と頭を下げるしかない。これで振り出しに戻る。「星野さんは、ずっと、なるほど、なるほどって聞いておきながら、ほうそうやなっては言いたくないわけ。絶対ギブアップはしなかった、それを使われたら、何も言えない。汚いともいえなかったしね」

 今、早川氏は3か月に1回のペースで星野さんのお墓参りに出かけている。「まだ生きてますって伝えてます」と笑うが、今でもそばにいるつもりで話しているはずだ。この世とあの世に別れても、変わることはない。まだまだ熱い関係は続いている。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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