4点追う序盤にスクイズは正解? 少年野球でノーサインを可能にする“野球脳”の育成
滋賀・多賀少年野球クラブの伝統は座学 小学1年生から野球脳育成
少年野球の“カリスマ指導者”と呼ばれる滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督のもとには、全国から指導者が練習の視察に訪れる。チームを越えて保護者から悩み相談や質問も受けている。10月に開催されたオンラインイベントでは、平日の夜にもかかわらず、少年野球の指導者や保護者ら365人が参加。時間内に収まらなかった質問に対し、辻監督が連載形式で4回にわたって回答する。第1回は、チームの象徴「ノーサイン野球」の土台となる「座学」について明かした。
多賀少年野球クラブは毎年のように全国大会に出場し、日本一も果たしている。「世界一楽しく! 世界一強く!」を掲げるチームには、バントや盗塁といったサインがない。選手が自ら考えて動くスタイルを可能にしているのは、辻監督による座学があるためだ。
「チームには園児から小学6年生まで約100人が所属していますが、小学1、2年生くらいから座学をします。ホワイトボードを使って説明し、必ず保護者にも一緒に聞いてもらいます」
辻監督の座学は「野球とは?」から始まる。セットカウントのあるバレーボールやテニス、卓球などとは競技特性が違うところから説明する。
例えば1セット25点先取のバレーボールであれば、1セット目を5-25と大差で落としたとしても、2セット目、3セット目を25-20で取れば試合に勝てる。3セットの総得点は55-65と相手より少なくても構わない。辻監督は、同じスポーツでも野球は得点の考え方や勝敗の決め方が異なると選手や保護者に伝える。
「私がバレーボールの監督だったら、序盤で立て続けに失点したセットは控え選手に交代して、次のセットに向けて主力を休ませます。でも、少年野球は6イニングの総得点で相手と争います。途中であきらめなくていいんです」