「どうすれば阪神に残れますか?」 禁断の“トレード拒否”を模索…思い知った現実

当時、労組プロ野球選手会会長だった岡田彰布氏に相談した

 だが、そこでも返事はしなかった。「中村監督は僕を開幕投手に起用してくれたし、一番、期待をかけてくれた人ですし、感謝しています。でもその時に結論は出せなかった」。何とか阪神に残れないか、トレードを断ることはできないか。それだけを考え、野田氏はブルペン捕手の西口裕治氏に相談した。「むちゃくちゃかわいがってもらっていて、家も近くていつも球場に一緒に行っていた人。まず最初に話を聞いてもらおうと思ったんです」。

 結果、当時のチームの“顔”である岡田彰布氏(現監督)の自宅に向かった。「西口さんが連れていってくれた。『そういう話なら、岡田さんに相談するのが一番やろ』ってね」。岡田氏は当時、労働組合日本プロ野球選手会会長を務めていた。野田氏は、通告されたオリックスへのトレードを拒否する方法がないか、問い合わせた。「断るとペナルティがあることを教えてもらった。3か月か半年の出場停止とか、減俸などは覚悟しなければいけないとか……」。

 岡田氏はそれこそ、親身になって考えてくれた。だが、トレード拒否の選択は難しかった。すでに現場レベルでは成立しているトレードだけに「無理矢理(阪神に)残ってもやりにくいだろうとか、そういうアドバイスももらいました」。複雑な思いを抱えながら野田氏は自宅に戻った。「岡田さんにいろいろ聞いて、もう(オリックスに)行くしかないんかと思って寝たのは覚えています」。それでも、できれば、夢であってほしいと願った。

「翌朝、起きてほっぺたを叩いてみたら痛かったんで『ああ、やっぱり本当だったんだな』って思ったのをものすごく覚えています」。野球人生の一大転機。もう一度真剣に考えて答えを出そう。だが、そう思う間もなかった。「朝8時頃から、ピンポンピンポンでした」。まだ阪神に返事もしていない段階で、家には報道陣が押し寄せてきた。そして、忘れられない出来事が……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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