日本で「ぬるま湯に浸かっていた」 中南米でプレーして実感…元DeNA乙坂の壮絶な1年

ベネズエラでプレーする元DeNA・乙坂智【写真:本人提供】
ベネズエラでプレーする元DeNA・乙坂智【写真:本人提供】

14時間のバス移動も…日本では最長4時間「今は『余裕やん、近い』と思える」

 ベネズエラのウインターリーグで盗塁王のタイトルを獲得した元DeNAの乙坂智外野手。夏のメキシカンリーグに続き、冬も中南米を舞台に選び、1年間海外でのプレーを続けた。ベネズエラでは連日、長距離のバス移動を繰り返しながらの過酷な日程を消化した。そんな充実感いっぱいのシーズンを振り返ってもらった。

 より高いレベルでのプレー環境を求め、無我夢中で飛び込んだベネズエラ。それは、過酷な移動の日々を乗り越えた2か月でもあった。3連戦ごとに移動する日本やメキシコとは違い、毎日対戦相手や開催都市が変わる変則日程。しかも乙坂の所属するブラボスは、マルガリータ島にある本拠地の球場が照明の故障で使えず、別のチームの本拠地ラ・グアイラの球場を間借りしていた。そのため、ホームの試合でも観客は少なく、スタンドで声援を送るのは選手の家族ら関係者がほとんど。地の利を生かせない中での戦いが続いた。

「メキシコでは金曜が移動ゲームでも、土日はホテルで寝ることができた。でもベネズエラは3連戦が組まれておらず、毎日対戦相手が変わるから移動の連続。最初、試合の日程表を見て『これはキツいな』と思っていたんですけど、想像の100倍キツかった」

 DeNAでプレーした日本では、横浜から広島まで4時間の新幹線移動が最長だった。だが、ベネズエラでは最長で14時間のバス移動。「今は『4時間なんて余裕やん、近い』って思える。こっちは隣町まで6時間かかるし、選手はバスの座席を2席使わせてもらえるけど、それでも体が固まるので、次の日には影響が出る。日本でいかにぬるま湯に浸かっていたかを感じました。何でも揃っている環境だし、広島への移動だけでブーブー文句を言ってたけど、こっちはバスで14時間。しかも道中で盗賊が出ますからね……」。

 道路が冠水し、5時間で行ける距離が10時間かかったこともあった。道中でのタイヤのパンクも4回経験。片道2時間ほどの距離だと、拠点としているホテルから日帰りで敵地の球場まで往復するのが常だった。

「椅子に座って机でご飯を食べられることや、ベッドで横になって寝られることが、こんなに幸せなのかと思いました。でも、そんな環境でやってこれたのは無我夢中だったから。外国人選手は助っ人なので、地元の選手よりもいい成績を残さないといけない。結果も必要だった。だから『疲れた』とは言わないようにしていた。自分でもよくやったと思います」

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